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中日新聞掲載の大学記事

2012.06.16

「ソウル」の経験 市川に伝授 元100メートル日本記録保持者 青戸慎司コーチ

 ロンドン五輪の陸上女子400メートルリレーの代表候補になった市川華菜(中京大4年)を育てたのは元男子100メートル日本記録保持者の青戸慎司コーチ(45)。中京大の学生時代にソウル五輪に出場した経験を生かし教え子を大きく飛躍させた。

 入学当初、青戸コーチは叱り役だった。愛知・岡崎城西高時代、全国大会で活躍した市川は春休みに体重が4キロ増加。「もっとやせなさい」「筋肉をつけなさい」。口を酸っぱくして言った。

 青戸コーチ自身にプレッシャーがあった。就任は2008年。「勧誘した1期生の市川を成長させられないと、責任を問われる」。陸上にさほど思い入れがなかった市川に大きな目標を持たせた。「日本選手権で入賞しよう」。当時「それはできないでしょ」と思った市川は、恩師の思惑を超える成長を遂げた。

 1年で日本選手権200メートルで8位入賞。2年では世界ジュニアの同種目で8位。3年でユニバーシアードと世界選手権の代表。大舞台を知るごとに意識が変わった。「練習の意図が分かり、結果を出せるようになっておもしろくなってきたのでしょう」と青戸コーチ。今では練習をしすぎる市川を止める役だ。

 指導の方針は褒めて伸ばすこと。「おまえほどストライドが大きくてバネのある選手はいないんだから、もっと速くなる」

 初の五輪に臨もうとしている市川にはまだ教えることがある。「選手村で水が出なかったり、食事で長い列に並んだりする。走ること以外に面倒なことがいっぱいある」

 自身の最高成績はバルセロナ五輪400メートルリレーでの6位入賞。「青戸さんの成績を超えたい」と意気込む市川にくぎを刺す。「オリンピックをなめてかからないこと」(垣見洋樹)

 あおと・しんじ 1967年、和歌山市生まれ。中京大入学後の88年に10秒28の日本新記録(当時)を樹立し、同年のソウル五輪400メートルリレーに出場。92年バルセロナ五輪は100メートルと400メートルリレーに出場し、リレーで6位入賞。98年の長野五輪はボブスレー4人乗りで出場。日本人男子初の夏冬五輪出場を果たした。

(2012年6月16日 中日新聞朝刊23面より)

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