進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て

中日新聞掲載の大学記事

2011.11.15

カーボンナノチューブ 発がん性 形状と関連 名大、安全性向上へ解明

 極小の炭素素材カーボンナノチューブの形状と発がん性との関連を、名古屋大大学院医学系研究科(生体反応病理学)の豊国伸哉教授と大学院生の永井裕崇さんらの研究グループが解明した。チューブが細く硬いと、腹腔(ふくくう)などの表面を覆う中皮にある中皮細胞を傷つけてがん化しやすいことが分かり、安全な素材開発へ応用が期待される。研究成果は米科学アカデミー紀要電子版に近く掲載される。

 豊国教授らは今回、直径の異なる5種類の多層カーボンナノチューブを中皮細胞に投与し、電子顕微鏡などで観察した。すると、細いチューブの方が太い方より細胞膜や核に突き刺さりやすいことが分かった。

 一方、アスベスト(石綿)はナノチューブより直径が大きくても中皮細胞に取り込まれ、ナノチューブとは異なるメカニズムで細胞内に入ることが示唆された。

 ただ、最も細いナノチューブは軟らかすぎて絡まり細胞に入らなかった。ラットの腹腔内への投与でも、炎症が起こりにくく発がん性が最も低かった。中皮細胞に入るためには、細いだけでなく直線を保つだけの硬さが必要だと分かった。

 カーボンナノチューブが石綿繊維と同様に中皮腫を引き起こす可能性は2008年に英国の研究グループなどが指摘し、その毒性の克服が課題となっている。

 豊国教授らは「燃料電池やディスプレーなど、ナノチューブの応用や実用化研究が進む中、人と環境に安全な素材を作るための重要な情報を提示できた」と研究の意義を話している。

(2011年11月15日 中日新聞朝刊3面より)
  • X

戻る < 一覧に戻る > 次へ