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中日新聞掲載の大学記事

2011.10.29

バトンパス磨き連覇 至学館大女子400リレー

■日本学生陸上対校で成果

 至学館大が先月、日本学生陸上対校選手権の女子400メートルリレーで連覇を果たした。400メートルリレー日本代表の今井沙緒里(3年)以外、短距離走の上位ランキングに名を連ねる選手がいない「雑草軍団」。走力だけでなく、バトン技術を磨き上げる戦略で全国の頂点に立った。

 今季の至学館大は、昨年大学記録を樹立して優勝したメンバーのうち2人が卒業し、走力では昨年を下回る陣容。そこで伊藤康太コーチ(30)はバトンパスにこだわった。

 大会に向けた学内の選考会では、走力で他の選手に劣っても技術の高い作野捺希(2年)を第3走者に抜てき。「コーナーを走りながらバトンを受けて渡すのは最も難しい。作野は10回やって10回同じ動作をする安定感がある」と伊藤コーチ。

 この起用が当たった。第2走者、松本望路(のぞみ)=2年=から3走作野へのパスで他大学に大きな差をつけた。2人の今季の100メートルの記録は日本ランクで300位にも入らない。だが動きが絶妙にかみ合った。

 スピードを落とさずつなぐ技術は練習で培った。同大では年中、男女含め50人の短距離部員が入れ替わりバトンをつなぐ独特の練習を行う。出だしの速さやバトンの癖などさまざまな特徴の選手に対応させるためだ。

 バトンは今井が日本代表合宿で学んだ「アンダーハンド」方式。渡す方が下から上へバトンを差し出し、受ける方は下ろした手で取る。受ける方が腕を後ろに伸ばさなくてもよいため前傾を保ちやすい。その半面、互いの手の距離が近くバトンを握る位置の感覚をつかみにくいため、練習を積む必要がある。

 メンバーは荒れた天候の日も練習を欠かさず、あらゆる状況に備えた。第1走者の加藤里奈(2年)は「本番は多少風が強かったけど、気にならなかった」と効果を語る。

 4人の100メートルの自己ベストの合計は48秒56で、優勝記録は45秒84。技術で2秒72縮めた計算だ。「リレーはバトンパスで(結果が)変わるところがおもしろい」と今井。至学館大の躍進は、単純な走力だけでは測れないリレー競技の奥深さを示している。(垣見洋樹)

(2011年10月29日 中日新聞朝刊28面より)
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