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2011.06.29
アジア選手権で進化 混成日本代表中京大ペア 七種−桐山、十種−中村
陸上のアジア選手権(7月7〜10日、神戸)に、中京大の混成競技ペアが出場する。女子七種競技の桐山智衣(2年)は4、5日の日本選手権混成競技を初制覇した逸材。男子十種競技の中村明彦(3年)も、5月の東海学生選手権で7675点と高得点を出し、日本選手権で5位と勢いに乗る。次代を担う2人は、アジアの強豪との顔合わせで、さらなる成長を誓う。 (斎藤正和)
■19歳で日本制覇
“新女王”がいよいよアジアの舞台へ飛び出す。初めて手に入れた日本代表の座。桐山は「こんなに早く日の丸をつけてしまっていいのかな」と照れ笑いしながらも「やるしかないな、って感じです」と真っ向勝負を挑む気だ。
県岐阜商3年時に全国高校総体を制し、鳴り物入りで中京大に進学。七種競技日本記録保持者でアテネ五輪代表の中田有紀(34)=日本保育サービス=を育てた中京大・本田陽監督に師事した。入学時は52キロと細かった体も、本田監督が作る練習メニューを冬場にきっちりこなして3キロ増。シーズン初戦だった4月の選抜和歌山大会でシニア大会初優勝を飾った。
5月の東海学生選手権では5463点と自己ベストを更新。絶好調で臨んだ日本選手権で見事に初優勝を飾った。10連覇を狙った中田が故障明けだったこともあるが、大学入学から1年あまりで日本の頂点に立った事実は、桐山の潜在能力の高さを示している。本田監督は「まだ基礎をつくる段階」と前置きした上で、今季の躍進について「ケガなく一貫して冬季練習ができた。スプリント系の種目が良くなり、ハードルや幅跳びの助走にもつながっている」と説明する。
■自分の力を出す
桐山は、日本一の味を「一番になれて純粋にうれしかった」と振り返る一方、「まだ1回勝っただけ。中田さんをはじめ他に強い人はたくさんいる。自分は挑戦者だとしか思っていない」と気を引き締める。もともと実績に溺れるタイプではない。「高校で勝ったのは過去の話。日本選手権もそう。それに浸ってちゃダメだな、と思う。自分には、まだまだ上に行きたい気持ちがある」。明るく前向きな性格に、トップ選手としての責任感と自覚がついてきた。
「アジア選手権は初めての大きな大会なので、自分の力を出すだけ。大会をきっかけに、もっと強くなっていけたら」。174センチの恵まれた体を躍動させ、アジア、そして世界へ。19歳の若きクイーンが、一つずつステージを上げていく。
■100メートル障害で3位
桐山は日本選手権混成競技の1週間後に行われた日本選手権女子100メートル障害に出場し、3位に食い込んだ。「自分が一番びっくり」と目を丸くする一方、「本田先生からは『混成の選手は、単独種目でも日本のトップで戦えるだけの力が必要』と言われている」と、師の教えをクリアしたことに満足げだった。
■伸びしろ期待
日本選手権で5位ながら、伸びしろを期待されての大抜てき。「若手らしく、得意種目では精いっぱい目立って、苦手種目は精いっぱい頑張る。成長を期待される試合運びをしたい」。中村はフレッシュに意気込んだ。
八種競技の高校チャンピオンは、名門で順調に能力を高めてきた。一昨年、昨年と2年続けて年齢別の日本最高記録を達成。5月の東海学生選手権で7675点をたたき出し、三たび年齢別日本最高を出した。「7675点はでき過ぎかな、という部分がある。『たまたま出た』と言われないよう、年内にもう一度そのぐらいの記録を出したい」
11日に行われた日本選手権で、十種競技の種目ではない400メートル障害に出場して5位。五輪3度出場の為末大に先着した事実を見れば、身体能力の高さは疑う余地がない。十種競技に耐えうる体を完成させた上で苦手とする投てき種目を伸ばせば、右代啓祐(スズキ浜松AC)に次ぐ8000点越えも決して夢ではない。
■市川華菜は同期
女子400メートルリレーの一員として日本新記録を更新し、短距離界のニューヒロインとして注目を集めている市川華菜(3年)は愛知・岡崎城西高の同期生。「同じ学年の選手が目立つのはすごく悔しい。負けないような結果を残したい」。中村がアジア選手権で意地を爆発させる。
■十種競技、七種競技
混成競技の五輪種目。2日間で男子10種目、女子7種目の競技を行い、記録を数値化して点数を競う。
十種競技の種目は、100メートル、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400メートル、110メートル障害、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500メートル(実施順)。七種競技が100メートル障害、走り高跳び、砲丸投げ、200メートル、走り幅跳び、やり投げ、800メートル。短中距離の走力、パワー、跳躍力のすべての資質と技術、2日間にわたって戦う精神力と精神力が求められる。今年の日本選手権で、右代啓祐(スズキ浜松AC)が8073点を出し、日本人初の8000点台を出して話題になった。
桐山智衣(きりやま・ちえ)
1991(平成3)年8月2日、岐阜市生まれの19歳。174センチ、55キロ。岐阜・岐北中で陸上を始め、3年時の全国中学校体育大会四種競技で3位。県岐阜商では全国高校総体七種競技に3年連続出場。3年時に優勝した。
中村明彦(なかむら・あきひこ)
1990(平成2)年10月23日、名古屋市南区生まれ、愛知県岡崎市育ちの20歳。180センチ、72キロ。六ツ美北中で本格的に陸上を始める。岡崎城西高入学時は走り高跳びを専門にしていたが、2年時から混成競技を開始。高3だった08年の全国高校総体八種競技を高校新記録(当時)で制覇した。07年の世界ユース選手権には走り高跳びで出場している。
(2011年6月29日 中日スポーツ9面より)
■19歳で日本制覇
“新女王”がいよいよアジアの舞台へ飛び出す。初めて手に入れた日本代表の座。桐山は「こんなに早く日の丸をつけてしまっていいのかな」と照れ笑いしながらも「やるしかないな、って感じです」と真っ向勝負を挑む気だ。
県岐阜商3年時に全国高校総体を制し、鳴り物入りで中京大に進学。七種競技日本記録保持者でアテネ五輪代表の中田有紀(34)=日本保育サービス=を育てた中京大・本田陽監督に師事した。入学時は52キロと細かった体も、本田監督が作る練習メニューを冬場にきっちりこなして3キロ増。シーズン初戦だった4月の選抜和歌山大会でシニア大会初優勝を飾った。
5月の東海学生選手権では5463点と自己ベストを更新。絶好調で臨んだ日本選手権で見事に初優勝を飾った。10連覇を狙った中田が故障明けだったこともあるが、大学入学から1年あまりで日本の頂点に立った事実は、桐山の潜在能力の高さを示している。本田監督は「まだ基礎をつくる段階」と前置きした上で、今季の躍進について「ケガなく一貫して冬季練習ができた。スプリント系の種目が良くなり、ハードルや幅跳びの助走にもつながっている」と説明する。
■自分の力を出す
桐山は、日本一の味を「一番になれて純粋にうれしかった」と振り返る一方、「まだ1回勝っただけ。中田さんをはじめ他に強い人はたくさんいる。自分は挑戦者だとしか思っていない」と気を引き締める。もともと実績に溺れるタイプではない。「高校で勝ったのは過去の話。日本選手権もそう。それに浸ってちゃダメだな、と思う。自分には、まだまだ上に行きたい気持ちがある」。明るく前向きな性格に、トップ選手としての責任感と自覚がついてきた。
「アジア選手権は初めての大きな大会なので、自分の力を出すだけ。大会をきっかけに、もっと強くなっていけたら」。174センチの恵まれた体を躍動させ、アジア、そして世界へ。19歳の若きクイーンが、一つずつステージを上げていく。
■100メートル障害で3位
桐山は日本選手権混成競技の1週間後に行われた日本選手権女子100メートル障害に出場し、3位に食い込んだ。「自分が一番びっくり」と目を丸くする一方、「本田先生からは『混成の選手は、単独種目でも日本のトップで戦えるだけの力が必要』と言われている」と、師の教えをクリアしたことに満足げだった。
■伸びしろ期待
日本選手権で5位ながら、伸びしろを期待されての大抜てき。「若手らしく、得意種目では精いっぱい目立って、苦手種目は精いっぱい頑張る。成長を期待される試合運びをしたい」。中村はフレッシュに意気込んだ。
八種競技の高校チャンピオンは、名門で順調に能力を高めてきた。一昨年、昨年と2年続けて年齢別の日本最高記録を達成。5月の東海学生選手権で7675点をたたき出し、三たび年齢別日本最高を出した。「7675点はでき過ぎかな、という部分がある。『たまたま出た』と言われないよう、年内にもう一度そのぐらいの記録を出したい」
11日に行われた日本選手権で、十種競技の種目ではない400メートル障害に出場して5位。五輪3度出場の為末大に先着した事実を見れば、身体能力の高さは疑う余地がない。十種競技に耐えうる体を完成させた上で苦手とする投てき種目を伸ばせば、右代啓祐(スズキ浜松AC)に次ぐ8000点越えも決して夢ではない。
■市川華菜は同期
女子400メートルリレーの一員として日本新記録を更新し、短距離界のニューヒロインとして注目を集めている市川華菜(3年)は愛知・岡崎城西高の同期生。「同じ学年の選手が目立つのはすごく悔しい。負けないような結果を残したい」。中村がアジア選手権で意地を爆発させる。
■十種競技、七種競技
混成競技の五輪種目。2日間で男子10種目、女子7種目の競技を行い、記録を数値化して点数を競う。
十種競技の種目は、100メートル、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400メートル、110メートル障害、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500メートル(実施順)。七種競技が100メートル障害、走り高跳び、砲丸投げ、200メートル、走り幅跳び、やり投げ、800メートル。短中距離の走力、パワー、跳躍力のすべての資質と技術、2日間にわたって戦う精神力と精神力が求められる。今年の日本選手権で、右代啓祐(スズキ浜松AC)が8073点を出し、日本人初の8000点台を出して話題になった。
桐山智衣(きりやま・ちえ)
1991(平成3)年8月2日、岐阜市生まれの19歳。174センチ、55キロ。岐阜・岐北中で陸上を始め、3年時の全国中学校体育大会四種競技で3位。県岐阜商では全国高校総体七種競技に3年連続出場。3年時に優勝した。
中村明彦(なかむら・あきひこ)
1990(平成2)年10月23日、名古屋市南区生まれ、愛知県岡崎市育ちの20歳。180センチ、72キロ。六ツ美北中で本格的に陸上を始める。岡崎城西高入学時は走り高跳びを専門にしていたが、2年時から混成競技を開始。高3だった08年の全国高校総体八種競技を高校新記録(当時)で制覇した。07年の世界ユース選手権には走り高跳びで出場している。
(2011年6月29日 中日スポーツ9面より)