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2011.06.04
大垣の短大 仏専門学校と提携
■聴講生受け入れ 「本場で」熱意高く
漫画家養成を目指すマンガコースを短大として全国で初めて開設した大垣女子短大(岐阜県大垣市)は7月にも、パリのビジネス専門学校「ユーラジアム」と漫画留学の提携協定を結ぶ。今後、毎年9月から聴講生として5、6人を半年間受け入れる。フランスは欧州で最大の漫画愛好国とされるが、教育機関同士の提携にまで発展するのは珍しい。(大垣支局・小椋由紀子、写真も)
ユーラジアムは、日本を中心にアジアに研究対象を特化し、2005年に設立された経営・アート専門学校。アート学科では、美術の基礎や漫画、アニメ、ゲームなどを教えているが、本場日本で学びたいという学生の要望も多く、提携先を探していた。
短大側も漫画の分野で海外の提携先を探していたところ、これを知った岐阜県国際交流員でフランス人のマイコ・ゴビさんが仲介。提携を前に昨年11月〜今年3月、仏側の学生を短大で試行的に受け入れた。
ユーラジアムからは19〜30歳の10人が来日し、漫画家の講師からデッサンや漫画の基礎を学んできた。同短大デザイン美術科の松本英三学科長(62)は「言葉の問題はあるが、授業は好評だった。提携にはホームステイや文化体験も組み込みたい」と意気込む。
「ベルサイユのばら」やサムライ漫画が大好きというブック・ナスタジアさん(23)は試行留学を体験。「漫画が少ない地元に出版社をつくるため、基礎や描き方を学びに来た。コマ割りやセリフなどのスタイルがフランスとは違うので、先生のアドバイスは貴重。日本の大学で学べて良かった」と話す。
経済産業省によると、日本漫画の海外市場規模で、フランスは米国に次いで2位。一時のブームは落ち着いてきているが、パリ郊外で毎年7月に開かれる日本のポップカルチャーイベント「JAPAN EXPO」では昨年、来場者が18万人を超えた。
国内唯一のマンガ学部がある京都精華大の吉村和真准教授によると、日本初の総合漫画施設、京都国際マンガミュージアムに1年間に訪れる外国人2万8000人のうち、3割超はフランス人という。
吉村准教授は「漫画には、独特のコマ割り表現や技術にとらわれない自由な発想などがある。漫画文化を生んだ日本という異国環境に身を置いて描いてみたいと思うのでは」と話している。
ユーラジアムは提携について「本場で漫画家や出版関係者と交流するのは、またとない経験。日本のコピーではなく日本との懸け橋となり、新しい制作軸が生まれれば」と喜ぶ。今後は留学前の日本語力アップにも力を入れるという。
■漫画教育の現状
1990年代から日本漫画の評価が海外で高まり、国内でも文化としての漫画が見直された。これを受け2000年以降、大学などでの漫画研究や教育が広がりを見せ、現在では全国10以上の大学、短大で漫画教育が実践されている。東海地方でも大垣女子短大のほか、名古屋造形大(愛知県小牧市)などにマンガコースがある。
(2011年6月4日 中日新聞夕刊1面より)
漫画家養成を目指すマンガコースを短大として全国で初めて開設した大垣女子短大(岐阜県大垣市)は7月にも、パリのビジネス専門学校「ユーラジアム」と漫画留学の提携協定を結ぶ。今後、毎年9月から聴講生として5、6人を半年間受け入れる。フランスは欧州で最大の漫画愛好国とされるが、教育機関同士の提携にまで発展するのは珍しい。(大垣支局・小椋由紀子、写真も)
ユーラジアムは、日本を中心にアジアに研究対象を特化し、2005年に設立された経営・アート専門学校。アート学科では、美術の基礎や漫画、アニメ、ゲームなどを教えているが、本場日本で学びたいという学生の要望も多く、提携先を探していた。
短大側も漫画の分野で海外の提携先を探していたところ、これを知った岐阜県国際交流員でフランス人のマイコ・ゴビさんが仲介。提携を前に昨年11月〜今年3月、仏側の学生を短大で試行的に受け入れた。
ユーラジアムからは19〜30歳の10人が来日し、漫画家の講師からデッサンや漫画の基礎を学んできた。同短大デザイン美術科の松本英三学科長(62)は「言葉の問題はあるが、授業は好評だった。提携にはホームステイや文化体験も組み込みたい」と意気込む。
「ベルサイユのばら」やサムライ漫画が大好きというブック・ナスタジアさん(23)は試行留学を体験。「漫画が少ない地元に出版社をつくるため、基礎や描き方を学びに来た。コマ割りやセリフなどのスタイルがフランスとは違うので、先生のアドバイスは貴重。日本の大学で学べて良かった」と話す。
経済産業省によると、日本漫画の海外市場規模で、フランスは米国に次いで2位。一時のブームは落ち着いてきているが、パリ郊外で毎年7月に開かれる日本のポップカルチャーイベント「JAPAN EXPO」では昨年、来場者が18万人を超えた。
国内唯一のマンガ学部がある京都精華大の吉村和真准教授によると、日本初の総合漫画施設、京都国際マンガミュージアムに1年間に訪れる外国人2万8000人のうち、3割超はフランス人という。
吉村准教授は「漫画には、独特のコマ割り表現や技術にとらわれない自由な発想などがある。漫画文化を生んだ日本という異国環境に身を置いて描いてみたいと思うのでは」と話している。
ユーラジアムは提携について「本場で漫画家や出版関係者と交流するのは、またとない経験。日本のコピーではなく日本との懸け橋となり、新しい制作軸が生まれれば」と喜ぶ。今後は留学前の日本語力アップにも力を入れるという。
■漫画教育の現状
1990年代から日本漫画の評価が海外で高まり、国内でも文化としての漫画が見直された。これを受け2000年以降、大学などでの漫画研究や教育が広がりを見せ、現在では全国10以上の大学、短大で漫画教育が実践されている。東海地方でも大垣女子短大のほか、名古屋造形大(愛知県小牧市)などにマンガコースがある。
(2011年6月4日 中日新聞夕刊1面より)