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中日新聞掲載の大学記事

学生活動  2023.07.30

在宅勤務医師 オンラインで活躍 診療と育児 上手に両立

アプリ「あんよ」を紹介するジークス社長で名大生の村上嘉一さん=名古屋市内で

アプリ「あんよ」を紹介するジークス社長で名大生の村上嘉一さん=名古屋市内で

■名大、名工大の学生発ベンチャー

 在宅勤務の医師がオンライン診療をするサービスが登場した。名古屋大と名古屋工業大の学生発のベンチャー企業が開発したアプリ「あんよ」を使い、6月から愛知県内の患者を対象に展開。8月から岐阜県、年内に三重県にも広げ、将来的には全国展開を目指す。出産や育児のために離職する女性医師も多い中、サービスが新たな働く場を生み出し、医師の仕事と家庭の両立に一役買うことが期待される。(長田真由美)

■アプリ「あんよ」

 あんよは、育児などのために在宅勤務を希望する医師が提携医療機関に保険医の登録をして、予約制でオンライン診療を行う。実施時間は午前8時~午後11時の間で、それぞれの都合に合わせて設定。ビデオ通話で診察し、薬の処方もする。薬は処方箋データを提携薬局に送って患者に取りに行ってもらうか、自宅に無料配送する。保険適用され、システムの利用料はかからない。

 現在は小児科医ら14人が登録しており、うち9人が子育て中の女性だ。「子育てや家事の隙間時間で働きたい医師に、働く環境を提供したかった」。サービスを運営する「ジークス」(名古屋市)の社長で名大情報学部生の村上嘉一(かいち)さん(23)は話す。

 同社は2019年、村上さんら名大と名工大の学生3人が起業。今年3月にサービスの実証実験を始め、6月から本格運用をスタートさせた。現在は小児科、内科、皮膚科に対応しており、将来的に精神科と婦人科にも拡大する。

 東京都の小児科医、瀬上友見さん(45)はもともと、都内の大学病院の新生児集中治療室(NICU)などで働いていたが、2人の子どもの出産と育児が重なり、24時間体制の仕事が難しくなった。「あんよなら、子どもの学校行事などに合わせて勤務を入れやすい」とアプリに登録した。オンラインによる診察では、小児患者の病気やけがを診た後に保護者から「もうひとつ相談してもいいですか」と、育児の悩みへの対処などを聞かれることも多いという。

 ただ、対面診療と違い、聴診器などで心音や呼吸音を聞くことができない。「大事な症状を見逃して重症化させないよう、どういう症状の時にかかりつけ医を受診した方がいいか話をしている」と語る。

■お互いが柔軟に

 村上さんは「子どもを小児科に連れて行きたくても、日中は働いていてなかなか行けない人もいる。あんよのサービスを通して、柔軟に働ける医師が増え、患者が気軽に受診できる環境も広がるといい」と願う。

(2023年7月30日 中日新聞朝刊25面より)

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