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中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2022.11.25

除菌レーザー 実用化へ着々 名大・天野教授ら、旭化成

 名古屋大の天野浩教授らと旭化成(東京)の共同研究グループは、UV-Cと呼ばれる紫外線を出す半導体レーザー素子「深紫外半導体レーザー」を、連続して発光させることに成功した。この半導体はウイルスの不活性化やものづくりで幅広い応用が期待されており、グループが目指す2025年の実用化に大きく前進した。

 UV-Cは波長が280ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)より短く、エネルギーの高い光線。生物のDNAを壊す特性があり、細菌やウイルスを不活性化できるほか、物質の分析や加工にも利用できる。だが、簡単にレーザーを出せる小型半導体がまだないのが課題で、グループは17年から共同研究してきた。

■ 「深紫外」連続発光に成功

 19年には、窒化アルミニウムを使った半導体素子で、波長271.8ナノメートルのレーザーをごく短時間発光させることに成功。その後の改良で、必要な電力を約10分の1に減らして発熱量を下げ、波長274ナノメートルで連続して光らせることができた。

 事業化を目指す旭化成は、物質の計測や解析用途から始め、より強いレーザー光が必要な殺菌や物質加工に用途を広げたい考え。天野教授は「乾電池数個でレーザーを出すことができるようになり、実用化へ非常に大きな進歩だ」と強調。除菌への利用については「鉄道車両や飛行機などの密封空間でウイルスを一気に不活化でき、家庭や医療機関での応用も期待できる」と話した。

 天野教授は14年、青色発光ダイオードの開発でノーベル物理学賞を受賞した。成果は28日付の米国物理学協会の学術雑誌「アプライド・フィジックス・レターズ」電子版に掲載される。(今井智文)

(2022年11月25 中日新聞朝刊31面より)

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