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中日新聞掲載の大学記事

2010.05.25

地域NPOに“実戦”参加 日本福祉大がサービスラーンニング導入

 愛知県美浜町の日本福祉大で、学生たちが地域のNPOの活動を学び、事業を手伝う学習に励んでいる。社会活動を通じて市民性をはぐくむ「サービスラーンニング」の講座。福祉系の大学に導入されたのは全国で初めてだ。 (安藤明夫)

 「赤ちゃんから100歳の方までお手伝いをしてます」。地域生活支援事業を手掛ける愛知県半田市の「りんりん」事務所。今月6日、地域で課題を解決していく活動の大切さを熱く語る村上真喜子理事長の説明に、学生たちが真剣な表情で聞き入っていた。

 りんりんは介護保険事業や学童保育などで、年間事業費が1億円を超すNPO。16年前、1人の高齢者の生活援助を女性7人で始めたのが、設立のきっかけだ。

 この日は、「サービスラーニング」の講義の「NPO見学」。約70人が3台のマイクロバスに分乗し、地元の知多半島のNPOを回った。

 知多半島は、福祉系NPOによる助け合い活動が盛ん。「この土地柄がなければ講義は成り立たなかった。NPO活動を通して地域の課題を感じ、リーダーの人柄に触れる中で、学生たちは多くを学ぶ」と担当の原田正樹准教授は話す。

 同大は、文部科学省の「質の高い大学教育推進プログラム」の補助金を得て、昨年度から「サービスラーンニング」を取り入れた。対象は社会福祉学部の2年生。3年生になって国家資格取得に向けた専門実習に入る前に、「現場の学び」を体験してもらおうと考えた。

■活動学び事業を手伝い

 講義のメーンは8、9月に取り組む「地域貢献活動」。地域の約20団体から自分が学びたいNPOを選び、活動計画書を作成。NPO側と打ち合わせたうえで、6日間の活動に入る。単にボランティア体験ではなく、自分で企画し、活動に協力していくことが目的だ。

 昨年、ひきこもりの人たちを支援するNPO「Toピア」(半田市)に行った学生たちは、若者たちが集まるフリースペースを任され、心の交流に努めた。高齢者・障害者を支える「ゆめじろう」(愛知県武豊町)で夏祭りの運営に汗を流した学生たちも。地域助け合いの「もやい」(同)のチームは、天体観測会を企画運営。地元の人たちに大好評だった。

■『社会見る目』養う

 昨年12月に開いた活動報告会では、学生たちの「社会を見る目」の成長を感じさせる報告が相次いだ。「地域のニーズは、制度や行政サービスの枠にとどまらない。それを解決しようとする住民の熱意に触れることは、社会に出た後もきっと役に立つ」と原田准教授は話す。

■サービスラーンニング

1980年代から米国で広がった教育活動。学生たちが地域に足を運んで人々とかかわり、地域のニーズに気付くことで、人間としての力を磨いていくことを目的とする。日本では、国際基督教大、明治学院大、立命館大など15大学で導入されている。

(2010年5月25日 中日新聞朝刊24面より)
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