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中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2020.01.15

火事場の吸引力 水いらず、真空利用して消火 豊橋技科大など考案

 消火剤を吹き付けるのではなく吸い込む逆転の発想で火災を食い止める?-。豊橋技術科学大などの研究チームは、炎や煙、有毒ガスを掃除機のように吸い取る初期消火法を考案した。消火剤や水をかけないためすばやく原状復帰でき、精密機器のある場所などで活用が期待できそうだ。(高橋雪花)

 研究チームのリーダーを務める同大の中村祐二教授によると、今回提案した消火法は、内部が真空状態の箱から管を延ばし、気圧差で炎などを吸い込む仕組み。箱に消火剤を入れて、吸い込んだ物体の火を消し止める。

 実験では、試験用に作られた電線を燃やし、金属パイプを垂直に1センチほど近づけて真空の力で吸引。消火に役立つ気体である窒素をパイプから吹き付けた場合と比較したところ、同じように消えた。その上、吸引した場合では燃えかすが無くなり、消火後の有毒ガスも出なかった。

 宇宙ステーションでは、高濃度の二酸化炭素による消火が主流で、中毒にならないよう酸素ボンベを着用する手間がかかる。研究チームは、迅速で無害な今回の消火法が、将来的に代わりの手段になることを期待している。また、精密機器があり換気が難しい工場のクリーンルームや手術室でも適用が見込めるという。

 今回の成果の論文発表後、大手防災メーカー4社の担当者が研究について聞きに来たという。中村教授は「コロンブスの卵の発想で、誰かによる商品化への布石を置けたのは意義深かった。いつかは1家に1台、火が消せる掃除機を置く日が来たらいいな」と話している。

(2020年1月15日 中日新聞朝刊28面より)

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