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中日新聞掲載の大学記事

2017.05.31

スマホ入力 思い通り!? 豊橋技科大 脳波で数字や音節認識

 思い浮かべるだけでスマートフォンに文字を出せれば−。豊橋技術科学大(愛知県豊橋市)の新田恒雄名誉教授(信号処理)と堀川順生(じゅんせい)名誉教授(聴覚生理学)らが、発声する前後の脳波から数字や音節を認識する技術を開発した。既に音声を文字に変換する技術はあるが、声を出せない人は使えない。この技術を応用し、将来的には頭で考えた文字をスマホなどに表示できるシステム作りを目指す。研究成果は8月にスウェーデンで開かれる国際会議で発表する。

 脳波の計測は、母国語が日本語で、両耳の聞こえる成人男性に対し、暗くした防音室で行った。64個の電極が付いた帽子をかぶせ、0〜9の数字と「アイウエオ」などの単音節を声に出した際の脳波を調査。声を出す0.5秒前から直後にかけて、言語に関する脳波が確認され、音声ごとに脳波のパターンが異なることを突き止めた。

 堀川さんは「実際に声を出さなくても、脳波は頭の中で考えるだけで出る」と説明。数字は90%、音節でも62%の精度で認識でき、実用化も視野に入った。ただ脳波のパターンは個人差が大きく、不特定多数の人に普遍化できるよう、技術をさらに進化させることが課題となる。

 新田さんは「実用化するには、100人のパターンを集め、その中から使う人に合うパターンを探すといい。最終的には、個人の特徴を学習させた方が精度が上がる」と話す。

 新田さんは、東芝に在職中の1981年に音声を聞き取り、文字を打ち出す「音声タイプライター」を開発。豊橋技科大教授に転じて多忙を極めていた2007年、60歳のときにくも膜下出血で約1カ月半、意識不明になった。「次は考えるだけで文字を打ち出せないか」と研究を始め、豊橋技科大の杉本俊二助教(神経科学)、東京理科大の桂田浩一准教授(音声情報処理)も含めて共同研究した。(豊橋総局・相沢紀衣)

(2017年5月31日 中日新聞朝刊1面より)
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