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中日新聞掲載の大学記事

2017.05.17

AO見直し 大学複雑 「学力低下に歯止め」「適性 大学で異なる」

■入試改革案

 文部科学省が16日公表した大学入試の見直し案では、書類や面接などで選抜するアドミッション・オフィス(AO)入試の名称を総合型選抜と変え、学力評価を義務付ける案も示された。学力偏重を改め、個性を重視しようと広まった一方、学生の学力低下の一因との指摘もあったAO入試。導入している大学の担当者からは歓迎と疑問の声が交錯した。

 「入学定員を確保するため過剰にAOで入学させる大学もあり、学力低下を招いている。自由にやらせて特性を伸ばす本来の趣旨からすると学力試験は必要ないんですが…」。愛知県内の私立大学関係者が打ち明ける。

 「AOでの入学者の学力低下をどうするか」。これは、多くの大学の悩みの種になっていた。工学部の定員の15%弱をAOで募集している三重大(津市)では独自に学力試験や口頭試問を行うほか、合格者に対しても入学前に教材を購入させ、試験するなどしてきた。担当者は「AOは『ALL、OK』の略と陰口をたたかれることもある。作文や面接だけでは限界があり、義務化は歓迎」と話す。

 歯学部などで各5〜10%程度がAOで入学する朝日大(岐阜県瑞穂市)も一般常識の試験や入学前の1泊研修で意欲を高めるなどの工夫をしており「一部の大学でやってきた試験の必要性が確認された」と義務化を評価する。

 一方、芸術系の学部では異なる意見も。名古屋学芸大(愛知県日進市)では、メディア造形学部で全体の3割をAOで募集している。高校の成績や面接に加え体験型授業を実施するコースもあり、事前の作品作りや在学生との交流で積極性や適性を判断する。担当者は「大学の特性により必要な能力は異なる。(学力評価の義務化で)AO入試の意味も薄れるのでは」と語った。

 今回、示された案では、早期合格による高校での学習意欲低下を防ぐため、総合型の出願時期は現行の8月以降から1カ月遅くなる。大手予備校河合塾の近藤治・教育イノベーション本部副本部長は「(一般入試までの期間が短くなり)学生の選択肢が狭まり、大学側も入試の負担が増えるかもしれない」と指摘した。

(2017年5月17日 中日新聞朝刊17面より)
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