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中日新聞掲載の大学記事

2015.06.27

薬採用 メーカー資料頼み 東海3県病院 回答の8割 鈴鹿医療科学大調査

 病院が薬を採用する際、どんな情報をもとに決めているのか、鈴鹿医療科学大(三重県鈴鹿市)のチームが東海地方の病院薬事委員会を対象にアンケートしたところ、8割近くが売り手側である製薬会社の資料頼りであることが分かった。利害関係のない論文などを参考にする委員会は少数にとどまる。27日から岡山市で開かれる「日本医薬品情報学会」の大会で発表される。

 調査は、子宮頸(けい)がんワクチンで重い副作用被害の訴えが相次いでいるのをきっかけに病院での薬の採用の現状を調べようと、同大薬学部の長南謙一准教授のチームが実施。昨年7、8月、日本病院薬剤師会に入会する愛知、岐阜、三重県内の491カ所の病院薬局へ郵送し、125病院から回答を得た。

 新しく薬を採用する際、どんな資料を参考にするか複数回答で尋ねたところ、上位はすべて製薬会社作成の資料だった。「薬の添付文書」が89%で最も多く、「製品概要」が7割、「パンフレット」や添付文書の内容を詳しく解説した「インタビューフォーム」が6割強、製薬会社が持つ非公認データなど「社内資料」が4割と続いた。

 薬の承認審査の経過や評価結果をまとめた厚生労働省の「審議結果報告書」は中立的で、インターネットで入手できるが22%にとどまり、治験データをまとめ学術的に認められている「原著論文」も14%だった。報告書を参照する委員会は論文にも目を通していることが多かった。

 長南准教授は「患者に多数の死者が出た抗がん剤のイレッサでは、厚労省の報告書などから副作用の危険を読み解く能力がない病院も多く、被害が拡大した。製薬会社に都合のいい情報だけでは薬害を防げない。薬事委員会は、さまざまな情報を活用して薬を適切に評価できる力を付けなければならない」と語る。

【メモ】
 薬事委員会
 病院で患者の治療や予防に使う医薬品の採択を決定する院内の機関で、院長や医師、薬剤師、看護師らで構成。設置は義務ではないが、ほとんどの病院に置かれている。審議で参考にする資料は、薬剤師が用意する場合が多い。

(2015年6月27日 中日新聞朝刊7面より)
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