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中日新聞掲載の大学記事

2014.11.13

金沢工大ゲノム研 カシミヤ「偽装」見逃さない “混じり毛”測定法実用化

 金沢工業大ゲノム生物工学研究所(石川県白山市)の所長を務める大箸信一教授(70)らが12日、高級繊維カシミヤと他の獣毛との混用率の科学的測定方法を世界で初めて実用化したと発表した。会見した大箸教授は「偽装表示抑止効果が期待できる」と話した。(松本芳孝)

 大箸教授は2010年、経済産業省から、タンパク質を構成するアミノ酸の連なり「ペプチド」による分析法開発の依頼を受けて研究をスタート。動物種によるアミノ酸配列の違いを質量分析機を使って見つけることに成功した。

 昨年4月から繊維検査機関、一般財団法人「ボーケン品質評価機構」との共同研究で、質量分析の結果を公式化し、混用率を容易に割り出せるようにした。

 さまざまな色に染められたカシミヤと羊毛、カシミヤとヤク、その3種の混用率を測定したところ、誤差は最大3.5%と家庭用品品質表示法に定める法定誤差5%を下回った。

 従来は顕微鏡を使って調べるしかなく、鑑別者の能力に頼る部分が大きかった。カシミヤと似ているヤクの毛が混入されていると判別が難しく、染色してあるとさらに難易度は上がった。DNA分析では、獣毛の動物種は分かっても、混用率は調べられなかった。

 大箸教授は「測定者が誰でも客観的な結果が得られ、分析時間も3日以内と比較的短い」とペプチド分析法の特徴を説明した。

 ボーケン品質評価機構は12月1日から新しい分析を受け付ける。

 ▼カシミヤ 中国北西部、モンゴル、イランの山岳地帯など、限られた地域にすむカシミヤヤギの産毛だけを使用した繊維。1頭から取れるのは100〜200グラムと少なく、原価は羊毛の8〜10倍と高価。表示が不適正な例も多く、消費者庁が事業者に適正表示を指示、指導した例もある。

(2014年11月13日 北陸中日新聞朝刊28面より)
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