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中日新聞掲載の大学記事

2014.11.01

モチ 余生も粘る 珍名競走馬 愛知大馬術部で奮闘

 競馬のG1、皐月賞にも出走した元競走馬のモチ(牡、10歳)が、愛知大馬術部(愛知県豊橋市)で第2の“馬生”を送っている。現役時代は「モチ粘る」の実況がファンの笑いを誘い、「粘度代表馬」の愛称で親しまれた。大レースは一度も勝てなかったが、学生を背に乗せ、障害馬術の全国大会を目指して奮闘中だ。(豊橋総局・西田直晃)

 500キロの青鹿毛(あおかげ)の馬体が揺れる。10月下旬、愛知県尾張旭市で開かれた愛知学生自馬競技会。コンビを組む3年、富永ゆかさん(22)とともに、高さ90センチの障害を次々に跳び越えていく。3位の好成績に、森修監督(70)は「2年半かけてやっと形になった。来年が楽しみ」とほほ笑んだ。

 モチは2006年10月に中央競馬でデビューし、年明けに2連勝。先行馬で序盤から好位に着けて、ともに逃げ切った。皐月賞は17着に終わり、その後は1勝しただけで11年に7歳で引退したが、「粘るモチ」は語り草になった。動画サイト「ユーチューブ」に投稿された「粘りに粘るモチ」の実況中継は、これまでの再生回数が6万回を超える。

 引退後、県内の牧場に引き取られ、12年5月に愛知大にやって来た。当初は苦難の連続。最初に手綱を握った4年、宮越舞さん(22)は「突然ものすごい勢いで走りだして驚いた。カーブで振り落とされたこともある」。競走馬として調教を積まれたため、興奮するとすぐ全速力に。1年前の大会でも、競技中に勝手に走ってしまい、以降は調教漬けの日々を過ごした。

 毎日1時間、高さ30センチに設置した丸太を跳ぶ基本動作を続け、走りたがるくせは次第に影を潜めた。部員ともうち解けていく。4年、志賀美咲さん(21)は「モチは女子が大好き。私たちにはおとなしく甘えるけど、男子が来ると背伸びをして威嚇します」と笑う。

 目指すのは競走馬時代の皐月賞と同じ最高峰への挑戦。全国大会出場には、高さ130センチの障害を跳び越えねばならず、「この冬のトレーニング次第」(森監督)という。

 モチのほか、「オレハマッテルゼ」など個性的な馬名を付けることで知られる現役時代の馬主、小田切有一さん(71)は「逃げたら粘り、追い込んだら伸びるという意味を込めて名付けた馬。馬術でも粘り強い戦いを見せて」と応援している。

【引退後の競走馬】 G1を制したり、血統に特に優れていれば、種牡馬や繁殖牝馬になるが、大半は地方競馬に移籍したり、牡馬なら去勢され、競馬場の誘導馬になったりして、乗馬や馬術などで余生を過ごす。日本中央競馬会(JRA)によると、2013年に引退した5243頭の内訳は、地方競馬2864頭、繁殖用667頭、乗馬用1389頭など。最後は食肉用に処分されることもある。

(2014年11月1日 中日新聞夕刊1面より)

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