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中日新聞掲載の大学記事

2014.05.03

「反人権に共感」増加か 憲法記念日 斎藤教授 学生の意識を考察

 憲法が尊重する基本的人権を軽視し、反人権的な考えに共感する若者が増えているのではないか−。朝日大の斎藤康輝教授(52)=憲法学=は最近、そんな懸念を抱いている。憲法記念日(3日)にちなみ、斎藤教授が朝日大や岐阜大、東京の私立大で持っている憲法の講義を受けた学生の感想に目を通してみた。(小笠原寛明)

 「日本の若者にさえ仕事がないのに、規制が緩くなり、たくさんの外国人が日本で仕事をすることにより私たちの仕事がなくならないか心配」。手のひら大の紙片に丁寧な文字で、外国人の永住権や参政権の拡大への不安がつづられていた。

 斎藤教授は4半世紀前から、憲法解釈をめぐる裁判の判例や各国の憲法の違いを教える講義を展開。毎回、学生一人一人の出席調査票の裏側に100字前後で感想を記入してもらっている。

 生活保護制度を取り上げた講義では、「『甘え』とみるのが正直なところ」「税金でまかなわれていると思うと損した気分」など受給者の自己責任を問う意見が散見された。週刊誌やワイドショーをにぎわせた芸能人の親族の不正受給を批判する意見が相次ぎ、「生活保護受給者が200万人以上もいるなんて。自分たちはどうなるのか」と不安を訴える学生もいた。

 同性愛をめぐっては「理解しようと思う」という意見が大半だったが、「差別になると思うが、性別がある以上、異性と付き合うのが当たり前」と切り捨てる学生も。差別が許されないことは「法律的に理解できるが、心情的に納得できない」と複雑な心境をのぞかせる学生もいた。

 斎藤教授は「右傾化と言えるが、そもそも今の大学生に右翼、左翼の意識は無い」と指摘。「就職の不安など将来の見通しが決して明るくないのも反映しているのでは」と推し量り、「大事なのは議論を重ねること。若者は社会の鏡。今どきの学生は、と片付けずに社会全体の課題ととらえるべきでは」と問い掛けている。

(2014年5月3日 中日新聞朝刊岐阜県版より)

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