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中日新聞掲載の大学記事

2013.05.21

高い体温熱中症ご注意 発汗量妊婦さん1.5倍 名工大グループが実証

 妊婦が夏に体内から奪われる水分量は一般女性の1.5倍に上ることを、名古屋工業大の平田晃正准教授(医用工学)らのグループがシミュレーション実験で突き止めた。気温35度の場合、一般女性の発汗量は1時間に100ミリリットルだが、妊婦は150ミリリットルとなった。

 平田准教授は「医学的には妊婦が汗をかきやすいことは知られているが、これを実証した。汗とともに体内のミネラルも失われ、熱中症などの危険性が高まるので、夏場には水分などをしっかり補給することが大切」と話している。

 グループは妊婦と一般女性を想定して、血流量や体温変化、発汗量などのデータを入力した人体モデルをコンピューターで再現。気温を35度に設定、体温や発汗量の変化を追った。

 一般女性は37度の体温が、1時間後には37.1度に上昇。妊婦の体温は、もともと37.1度と高かったのが、37.3度まで上がった。

 これに伴い、妊婦は一般女性より大量に発汗。1時間経過後は、1分間の発汗量が一般女性の2.1ミリリットルに対し、妊婦は3.0ミリリットルに増加。1時間では一般女性の1.5倍となった。計算上、8時間では両者の差が400ミリリットルになり、妊婦が失う水分は1.2リットルとなる。

 胎児は体温が高く、これに引きずられる形で妊婦の体温も高くなり、外気温が高いと汗の量が一般女性より増える。ただ、妊婦の体温が上がって発汗量が増えても、母体が健康なら普通、胎児は安全という。

 平田准教授らのグループは以前にも同様の手法を使い、自動車内など日光が当たる気温45度の環境に3歳児を放置した場合、13分で熱中症(脱水症状)になる可能性があるとの研究結果を公表している。

 今回の研究結果は、英国物理学会誌「フィジクス・イン・メディスン・アンド・バイオロジー」の電子版に近く掲載される。

(2013年5月21日 中日新聞朝刊1面より)
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