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2012.01.12
片まひ歩行に強い味方 名工大、強化スーツ開発
動力なしで、体の片側がまひした「片まひ」の人の歩行を助ける強化スーツの試作機を、名古屋工業大の佐野明人教授らのグループが開発した。腰から下に装着して歩くと、歩幅を広げたり、脚が前に出やすくなったりする。2012年度にも福祉現場で実証実験をスタートさせる。
試作機は重さ1.5キロの金属製。ひざの部分が折れ曲がるようになっている。まひのある方の脚に装着すると、正常なもう一方の脚が前に進むのに反応して振り子のように動作し、まひの脚を前に出す働きをする。
まひしている脚は筋肉が硬直。単に前に出るだけでは、足が地面に擦れてしまう。そこで、前に進む際に試作機のひざの部分が後ろに折れ曲がるように細工。ももが先に進み、すねがその後に前に来るようにした。実験では、試作機を使うとまひした脚のひざが30度多く曲がるようになった。
既に、動力を使って歩行支援をするロボットスーツをサイバーダイン社が開発。試作機よりも効果は大きいが、月額10万円以上ものレンタル費用が必要となる。動力がない試作機には複雑な機械がいらないため、費用は10分の1に抑えられるという。
試作機には、斜めにしたランニングマシン上で人間とほぼ同じような形で歩ける「受動歩行」という仕組みを応用。グループは、独自に製作した受動歩行ロボットを13時間45分歩かせ、2009年にギネス世界記録に認定されている。
佐野教授は「比較的まひが軽い人は歩くのがおっくうで『寝たきり』ならぬ『座りきり』になる傾向がある。リハビリ現場だけでなく、家庭でも使える」と話す。
片まひにつながる国内の脳卒中患者は140万人にのぼる。歩行支援機の潜在的な利用者となる日本の高齢者は、15年に人口の26%に当たる3300万人まで増えると予測されている。12年度は診療報酬・介護報酬の同時改定が予定されているだけに、安価な歩行支援機に注目が集まりそうだ。
(2012年1月12日 中日新聞朝刊1面より)
試作機は重さ1.5キロの金属製。ひざの部分が折れ曲がるようになっている。まひのある方の脚に装着すると、正常なもう一方の脚が前に進むのに反応して振り子のように動作し、まひの脚を前に出す働きをする。
まひしている脚は筋肉が硬直。単に前に出るだけでは、足が地面に擦れてしまう。そこで、前に進む際に試作機のひざの部分が後ろに折れ曲がるように細工。ももが先に進み、すねがその後に前に来るようにした。実験では、試作機を使うとまひした脚のひざが30度多く曲がるようになった。
既に、動力を使って歩行支援をするロボットスーツをサイバーダイン社が開発。試作機よりも効果は大きいが、月額10万円以上ものレンタル費用が必要となる。動力がない試作機には複雑な機械がいらないため、費用は10分の1に抑えられるという。
試作機には、斜めにしたランニングマシン上で人間とほぼ同じような形で歩ける「受動歩行」という仕組みを応用。グループは、独自に製作した受動歩行ロボットを13時間45分歩かせ、2009年にギネス世界記録に認定されている。
佐野教授は「比較的まひが軽い人は歩くのがおっくうで『寝たきり』ならぬ『座りきり』になる傾向がある。リハビリ現場だけでなく、家庭でも使える」と話す。
片まひにつながる国内の脳卒中患者は140万人にのぼる。歩行支援機の潜在的な利用者となる日本の高齢者は、15年に人口の26%に当たる3300万人まで増えると予測されている。12年度は診療報酬・介護報酬の同時改定が予定されているだけに、安価な歩行支援機に注目が集まりそうだ。
(2012年1月12日 中日新聞朝刊1面より)