進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て

中日新聞掲載の大学記事

2011.10.12

遺伝性乳がんの発生 変異遺伝子が直接関与 愛知医科大准教授ら発表

 乳がんの5〜10%を占めるといわれる遺伝性乳がんで、2つあるがん抑制遺伝子「BRCA1」の片方の異常ががん発生に直接関与していることを、愛知医科大の小西裕之准教授らのグループが突き止めた。米科学アカデミー紀要電子版に11日、掲載された。よりよい治療法の選択や新たな治療薬の開発につながる可能性がある。

 遺伝性乳がんの患者の約3割は、がん抑制遺伝子の片方が生まれつき変異のため機能を喪失している「ヘテロ変異」。これまで、乳がん発生のきっかけは、ヘテロ変異の状態から正常な方の遺伝子が偶発的に失われ、2つとも完全に喪失する「ホモ異常」だと考えられていた。

 小西准教授らは「ヒト細胞遺伝子ターゲティング法」という特殊な技術を用いて、試験管内でヘテロ変異の細胞を人工的につくり出し、正常な細胞と比較。ヘテロ変異の状態ですでにがん細胞に似た性質を持つことを突き止めた。放射線による遺伝子障害の修復能力が低下し、がんの特徴であるゲノム(全遺伝情報)不安定性が確認されたという。

 現在、ゲノム不安定性のある細胞のみを攻撃する抗がん剤の臨床試験が行われているが、小西准教授は今回の結果から「ヘテロ変異の女性患者に投与した場合、新たながんを誘発するなど予期せぬ副作用が現れないか長期的に観察する必要がある」と副作用の危険性を指摘。一方、ヘテロ変異細胞内で活性化するがん遺伝子を発見できれば、「がん細胞のみを攻撃する薬の開発につながるかもしれない」と期待している。

(2011年10月12日 中日新聞朝刊3面より)
  • X

戻る < 一覧に戻る > 次へ