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中日新聞掲載の大学記事

2011.01.19

名大、がん治療に応用期待 細胞増殖促すタンパク質 分解の仕組み解明

 細胞を増殖させる働きがあるタンパク質「EGF受容体」が、細胞内で移動して分解されるために必要な仕組みを、名古屋大大学院理学研究科の松本邦弘教授、花房洋助教らのグループが解明した。分解が阻害されると、細胞ががん化することが知られており、がん治療に役立つ可能性がある。19日の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に発表する。

 EGF受容体はヒトの細胞の表面にあり、活性化すると細胞増殖を促す信号を出すが、過剰になると細胞のがん化を引き起こす。活性化した受容体は、細胞内を移動する小器官「エンドソーム」の穴に取り込まれて深部まで運ばれ、細胞核付近の小器官「リソソーム」の内部で分解されて信号が止まることが知られていたが、詳しい仕組みは不明だった。

 グループは細胞内でつくられるリン酸化酵素「LRRK1」に注目。この酵素の産出を人為的に抑制し顕微鏡で観察すると、EGF受容体がエンドソームの穴に取り込まれないまま蓄積されていた。エンドソームは移動せずに細胞の浅い部分に留まり、受容体が増殖信号を出し続けた。

 グループは、LRRK1がEGF受容体の取り込みと運搬を制御していると結論づけた。花房助教は「LRRK1をコントロールできる薬を開発できれば、EGF受容体が引き起こすがんを防げる」と話している。

(2011年1月19日 中日新聞朝刊3面より)
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