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学生活動 2025.11.20
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高齢女性受刑者 絵画で温か交流 愛大生らと対話 一緒に描く

紙芝居を披露する学生ら=豊橋市今橋町の豊橋刑務支所で
愛知大文学部の学生グループが、豊橋市の名古屋刑務所豊橋刑務支所の70~80代の女性受刑者らとともに絵を描く活動に取り組んでいる。最初は緊張してなかなか受刑者らと話せなかった学生たちも次第に打ち解け、一緒に描いた絵を集めた紙芝居を同支所のイベントで発表した。受刑者からは「社会復帰したら絵画教室に通い、自分の部屋に絵を飾りたい」と前向きな感想もあり、学生たちを喜ばせた。(伊東誠)
グループは、障がいのある人やお年寄り、外国にルーツのある人らとの表現活動を実践してきた愛知大文学部(現代文化コースメディア芸術専攻)の吉野さつき教授(57)ゼミの3年生7人。主に女性を収容する同支所から「更生教育プログラム作りに協力してほしい」と相談を受け、温かくぽかぽかした雰囲気で参加者同士が交流を育めるようにとの願いを込めた「ぽかぽかの会」の名称で活動してきた。
学生7人が受刑者とマンツーマンで、「思い出の場所」を絵のテーマに1時間半の対話を3回重ねた。受刑者らは学生から「どんな場所でしたか?」「そのとき、一緒に行った人は?」などと尋ねられながら描いていき、語った内容を基に絵に添える文章も書いた。
吉野教授が学生に指示したのは、「ボランティアや慰問ではなく、対等の立場でコミュニケーションをとること」。学生たちは当初、緊張したり意図が伝わるか不安がっていたが、回数を重ねるごとに対話が増え、受刑者にも笑顔が見られるようになっていった。
野々垣好香(このか)さんは「最初はどう接すればいいのか戸惑ったが、だんだん交流でき、女子会みたいな素敵な時間になった」、藤原アンさんは「話すことや書くこと、芸術の素晴らしさを実感した」と話した。
今月15日にあった同支所の一般開放イベントでは、7枚の絵に学生がメッセージを添えた約10分間の紙芝居形式で、4回発表した。初回は約40人の見学者がじっと見入っていた。
吉野教授は「絵を描くという表現を通じて対等に話したり互いを知る機会ができ、双方に学びがあったと思う」と手応えを語った。
(2025年11月20日 中日新聞朝刊東三河版より)