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お知らせ  2024.06.02

宇宙歯学 知見磨く 愛知学院大 国内初の研究部署

宇宙と歯の研究について話す愛知学院大の前田初彦教授=名古屋市千種区で

宇宙と歯の研究について話す愛知学院大の前田初彦教授=名古屋市千種区で

 人が月面など宇宙で暮らす時代を見据え、愛知学院大歯学部(名古屋市)が全国の歯学系大と連携し、宇宙空間で歯の健康を保つための研究を始めた。宇宙では虫歯などの病気がどう進行するか未解明な点が多い。水なしで歯磨きができる薬剤開発にも取り組み、成果は宇宙だけでなく、災害時の水不足環境や介護現場での口腔(こうくう)ケアにも役立てる。(平井良信)

■災害時や介護に生かす

 現在、米国や日本が参加する有人月面探査「アルテミス計画」が進み、2030年代には月面基地で人が暮らす可能性がある。だが、月面で重力が地球の6分の1になるなど宇宙空間は地球上と環境が大きく異なる。民間人による宇宙旅行も始まる中、宇宙と歯の関係を専門的に研究する必要性が高まっていた。

 愛知学院大は昨年12月、大学院歯学研究科の未来口腔医療研究センター内に「宇宙歯学研究部門」を立ち上げた。宇宙で虫歯などになるメカニズムの解明や口腔内の健康維持を専門に扱い、同様の研究部署は国内の大学で初めてとなる。東京歯科大や広島大など約10大学と連携する「日本宇宙歯学研究会」も創設した。

 活動は今年4月に本格的に始まり、虫歯や歯周病の原因となる微生物が、宇宙空間でどのように増殖するかを微小重力再現装置を使って調べるほか、かむ力やあごの骨、味覚が宇宙でどう変化するか研究する。民間人が宇宙に行く際、治療中の虫歯があって良いかなど歯の治療に関するガイドラインも策定する。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、輸送コストがかかる水は宇宙で貴重なため、宇宙飛行士は歯磨きする際に節水が求められる。愛知学院大は企業とともに水なしで洗浄できる歯磨き剤の開発も目指す。成果は地上にも還元し、水の確保が課題となる災害時の口腔ケアや、うがいや吐き出しが難しい高齢者らがいる介護現場などでの活用も進めたい考え。

 宇宙歯学研究部門の部門長を務める前田初彦教授は「人が宇宙で暮らすために歯は大切であり、研究を通じてより快適な生活の実現に貢献したい」と話した。今後、JAXAとの連携や海外の宇宙機関との協力も検討していく。

◇アルテミス計画
1969~72年に宇宙飛行士を月面着陸させたアポロ計画以来となる米国主導の有人月探査計画。月周回基地や月面の滞在拠点、発電設備などを建設して2030年代に長期滞在を可能にする。日本人の宇宙飛行士も月面に降り立つ予定で、トヨタ自動車などは探査車「ルナクルーザー」を開発している。40年ごろには有人火星探査も計画されている。

(2024年6月2日 中日新聞朝刊1面より)

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