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中日新聞掲載の大学記事

2016.07.14

電子カルテ97万人分 分析 病気発症リスク予測へ 全国初 藤田保健衛生大など

 藤田保健衛生大(愛知県豊明市)は付属する病院の電子カルテに蓄積された膨大な患者データを分析し、発症リスクの予測や治療法の選択に生かすデータ解析事業を第一生命保険、日本IBMと共同で始める。大学が持つ電子データと2社の分析力と技術を組み合わせた日本初の事業という。まずは糖尿病を対象に実施し、軌道に乗れば、骨粗しょう症など他の病気にも広げる。

 藤田保健衛生大病院は2004年に電子カルテを導入。12年間で約97万人分の症状や治療結果などのデータを蓄積する。必要な情報を瞬時に検索できるデータベース化が難しかったが、カルテの記述文まで収集、整理できる日本IBMの人工知能システム「Watson(ワトソン)」の技術で可能になった。

 個人情報が漏れないようにデータの匿名化を厳守して解析する。糖尿病では、これまでに診断した約2万人のカルテから、患者の症状や治療、検査の数値などのほか、発症前の貧血やめまいの有無などのデータを解析。患者が重症化するリスクを予測し適切な治療の選択をしたり、発症の危険度を見極め最適なタイミングで健康指導をしたりできるようにする。

 第一生命は保険加入者のデータ解析でワトソンの技術を活用しており、培った手法を患者のデータ解析に生かす。結果を糖尿病関連の保険商品の開発などに活用する。

 1年後をめどに実用性を確認する。同大病院の柳谷良介・医療情報システム部長は「国内の糖尿病患者は300万人超。発症を抑え重篤化を防ぐことで国民の健康寿命を延ばし医療費抑制にもつなげたい。発症した患者でも加入できる保険商品ができることも期待したい」と話す。

(2016年7月14日 中日新聞朝刊3面より)
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