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中日新聞掲載の大学記事

2015.10.20

「平和の絵」若者と語る 企画展の名芸大 沖縄の美術館館長が講師

 米軍普天間飛行場に食い込むように立ち、先の沖縄戦に関連する絵画の所蔵で知られる佐喜真(さきま)美術館(沖縄県宜野湾市)の佐喜真道夫館長(69)が18日、同館の所蔵品を展示している名古屋芸術大(北名古屋市)を訪れ、高校生と大学生を対象とする公開ゼミ「『平和』の絵画を巡って」で講師を務めた。(井上峻輔)

 参加者は、8月に同大が開いたワークショップ「平和についての絵画を描く」に取り組んだ20人ほど。会場の壁には彼らが1点ずつ描いた作品が飾られた。

 作品は、それぞれが考える平和を表現している。作者1人ずつと言葉を交わした佐喜真館長。歌を歌う少女を描いた作品には「ひめゆり学徒隊も、太陽の下を歌いながら歩きたいと願っていた」。テレビニュースを見る若者の周りを亡霊が囲む作品には「沖縄の人は、これと似た考え方を持っている」などとコメントしていった。

 日本福祉大付属高校(美浜町)美術部の日比あゆみさん(17)は、青い空を見上げる人と赤い背景の中で敬礼する兵隊を対比させる作品を描いた。赤い背景は、わずかに青空にも浸食するように表現した。「近い将来に、また戦争が起こってしまうかもしれないから」

 そんな学生たちの作品に、佐喜真館長は「まだまだ子ども」と厳しい評価。「戦争の実態は想像を絶する。それをちゃんと知ることが平和を語ることにつながっていく」と話す。

 佐喜真美術館の作品の展示と公開ゼミを企画した西村正幸教授(58)は「美術家が作品で平和を伝える意味は大きい。戦争反対と言葉で訴えるよりも心に響く」と参加者に呼び掛けていた。

 名古屋芸大では企画展「佐喜真美術館のスタンス」を28日まで開催中。同館所蔵品を沖縄県外で展示するのは、海外を除くと初めてだという。

 「原爆の図」で知られる故・丸木位里、俊夫妻が沖縄戦を描いた連作や、2度の大戦で息子と孫を失ったドイツの女性版画家ケーテ・コルビッツの作品など37点を展示している。

 開館時間は午後0時15分〜6時。(問)名古屋芸大=0568(24)0325

(2015年10月20日 中日新聞朝刊尾張版より)

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