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中日新聞掲載の大学記事

2015.05.20

豊橋の近代化 見守った館 旧陸軍師団長官舎 「愛知大学公館100年」本に

 旧陸軍の師団長官舎として明治末期に建てられた「愛知大学公館」(豊橋市高師石塚町)の歴史を、愛知大・東亜同文書院大学記念センターが「愛知大学公館100年物語」として初めて本にまとめた。師団の誘致から軍都・豊橋への発展、官舎にまつわるこぼれ話などが盛り込まれている。(小椋由紀子)

 旧陸軍第15師団司令部は1908(明治41)年、現在の愛大キャンパス(豊橋市町畑町)内に創設。師団長官舎は12年に建設された。

 洋館に和館を併設した木造平屋建て。空襲や戦後の取り壊し、改築を免れ、師団長官舎としては全国で唯一、創建当時の姿を残す。

 戦後は愛大学長や教員の宿舎、学生も交えた「学問談議」の場としてにぎわったが、大学紛争を経た80年代以降、存在感が薄れていった。老朽化も進み、現在は閉鎖されている。

 2012年、築100年を記念し、特別公開すると、2日間で1000人が訪れた。予想以上の反響に、藤田佳久・愛大名誉教授らは「保存の機運が一層、高まれば」と、歴史や魅力を伝える本の出版を企画した。

 第15師団の誘致から、吉田城跡に置かれた歩兵第18連隊を含めて「軍都」と呼ばれた豊橋の発展ぶり、官舎建設の経緯、公館への再生などの歴史を記し、約30枚の写真やスケッチで構造も解説した。

 師団長に皇族の久邇宮邦彦(くにのみやくによし)王が着任した時の様子や、豊橋に一時滞在した長女良子(ながこ)女王が裕仁親王(昭和天皇)の妃(きさき)に内定した時の市民の盛り上がり、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)による接収の危機なども書かれている。

 02年、公館は豊橋市の文化財に指定。05年の愛知万博時に、迎賓館に改築する構想もあったが、立ち消えになった。12年の特別公開を機に今年3月、市と愛大が利活用の覚書を交わし、保存に向けて動き始めた。

 著者の藤田名誉教授は「公館は豊橋初の洋風建築で近代化の象徴。秘められたドラマや歴史の裏側を知ってほしい。全国で歴史的な建物がどんどん壊されているが、積極的な利活用で保存につなげたい」と語る。

 B5判、55ページ。926円。あるむ発行。精文館書店や豊川堂などで購入できる。(問)東亜同文書院大学記念センター=0532(47)4139

(2015年5月20日 中日新聞朝刊東三河版より)
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