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中日新聞掲載の大学記事

2015.02.13

細胞のバリアー緩む仕組み解明 名大グループ 脳への投薬応用に期待

 ヒトの臓器や器官を覆っている上皮細胞の膜に、外部からの毒素によって隙間ができて内部に異物が入り込むメカニズムを、名古屋大細胞生理学研究センターの藤吉好則特任教授らのグループが解明した。このメカニズムを応用して、上皮細胞の膜が投薬を阻んでいる脳に対する新しい投薬方法が生まれる可能性がある。

 ヒトの臓器や器官は、上皮細胞が数珠つなぎになった膜が表面を覆い、内部を守っている。上皮細胞は「クローディン」と呼ばれるタンパク質の働きによって、密着して連なっている。このクローディンの働きで、ナトリウムや塩素など、臓器や器官に必要なイオンのみが、上皮細胞の隙間を通って内部へと入り込める。

 藤吉特任教授らのグループは、ウエルシュ菌という食中毒菌が小腸のバリアーを破壊するメカニズムを研究。27種類あるクローディンのうち「19番」の一部が、ウエルシュ菌の毒素と結合した際にバリアーが緩み、その隙間から毒素が内部侵入することが分かった。

 脳疾患では、このバリアー機能が疾患のある部位を狙った投薬を阻むが、今回の成果を応用し、バリアーを通過して投薬できるようになる可能性が開けるという。藤吉特任教授は「毒素と同じような性質を持つ無害な物質を作りだして薬と一緒に体内に注入すれば、バリアーを緩めて、その隙間から狙った部位に投薬をすることが可能になる」と話している。研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載される。

(2015年2月13日 中日新聞朝刊33面より)
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