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2009.01.21
オバマ大統領就任 川島・南山大教授に聞く
オバマ新大統領の就任演説について、2002年に米国で本人を取材した経験がある川島正樹・南山大教授(米国史)は「米国民に現在の危機の深刻さを再認識させ、責任と義務を強調する現実主義的な演説」と評する。
キーワードは「新たな責任の時代」。国民の大きな期待を背負っていることを強く自覚した上で、聞き心地の良い政策を提示するのではなく、危機的な経済状況を乗り越えるためには、米国民が建国期からの美徳とする勤勉さ実直さ、勇気を持って対処するしかないことを伝えている。
緊急対策として、すぐに国民の期待に応える内容はなく、地道な積み重ね以外に道はないことを強調している。責任を強調したのは第35代ジョン・F・ケネディ大統領の就任演説に似たところがある。人気のある大統領だからこそできるのではないか。「大きな政府」「小さな政府」というイデオロギー論争に翻弄(ほんろう)されることなく、実務的に機能する政府であるべきことに重点を置いている。
演説で、米国民に「世界に義務を負っている」と言及している点は、米国が内向きにならず、国際的責任があることを強調した。第二次世界大戦前の大恐慌時、第32代フランクリン・ルーズベルト大統領が「ニューディール政策」を打ち出し、保護主義に走ったことで、ファシズムの暴走を止められず戦争を招いたことの反省に立っているのだろう。
期待背に『責任』強調
責任の自覚は米国民だけでなく、他国民にも呼びかけている。世界の平和については、イスラム諸国も含めた国際協調を求めている。イラク、アフガニスタン問題においては、これまでの米国同様、力の行使を否定しておらず、米国との協力を訴えている。「われわれのような豊かな国々は、国外での苦しみに無関心でいたり、地球の資源を浪費できない」と述べているのはその表れといえる。
(2009年1月21日 中日新聞夕刊12面より)
キーワードは「新たな責任の時代」。国民の大きな期待を背負っていることを強く自覚した上で、聞き心地の良い政策を提示するのではなく、危機的な経済状況を乗り越えるためには、米国民が建国期からの美徳とする勤勉さ実直さ、勇気を持って対処するしかないことを伝えている。
緊急対策として、すぐに国民の期待に応える内容はなく、地道な積み重ね以外に道はないことを強調している。責任を強調したのは第35代ジョン・F・ケネディ大統領の就任演説に似たところがある。人気のある大統領だからこそできるのではないか。「大きな政府」「小さな政府」というイデオロギー論争に翻弄(ほんろう)されることなく、実務的に機能する政府であるべきことに重点を置いている。
演説で、米国民に「世界に義務を負っている」と言及している点は、米国が内向きにならず、国際的責任があることを強調した。第二次世界大戦前の大恐慌時、第32代フランクリン・ルーズベルト大統領が「ニューディール政策」を打ち出し、保護主義に走ったことで、ファシズムの暴走を止められず戦争を招いたことの反省に立っているのだろう。
期待背に『責任』強調
責任の自覚は米国民だけでなく、他国民にも呼びかけている。世界の平和については、イスラム諸国も含めた国際協調を求めている。イラク、アフガニスタン問題においては、これまでの米国同様、力の行使を否定しておらず、米国との協力を訴えている。「われわれのような豊かな国々は、国外での苦しみに無関心でいたり、地球の資源を浪費できない」と述べているのはその表れといえる。
(2009年1月21日 中日新聞夕刊12面より)