HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て
2014.09.05
心不全悪化防ぐネット 金沢医大など 患者別の器具開発
心不全の悪化を防ぐ医療器具として、金沢医科大(石川県内灘町)や金沢工業大(同県野々市市)、名古屋大などの研究者グループは、患者の心臓に合わせて個別に設計できる網目状の心臓サポートネットを世界で初めて開発した。直接かぶせて圧力をかけ、悪化の原因となる心臓の拡大を抑える仕組み。2018年度以降の実用化を目指す。
研究者代表の秋田利明・金沢医科大教授(58)は「移植や人工心臓治療しか選択肢が残されていない段階に進む患者を減らせる」と期待している。
共同研究者は、ほかに大阪大や医療機器開発製造の「東海メディカルプロダクツ」(愛知県春日井市)など。ネットは、磁気共鳴画像装置(MRI)による心臓の画像から取得した三次元モデルを基に作る。モデルを活用してネット装着時の圧力のかかり方などをソフトで詳細に解析、設計する技術を確立した。実際の製作には、縫製なしで立体的に編めるコンピューター制御の編み機を使う。
グループが研究の参考にした米国製の従来品は、6種類のサイズ設定。外科医が手術中に切って大きさを合わせなければならず、効果がばらついた。開発したネットは調整の必要がないため手術時間を短縮でき、患者への負担も小さい。
また、従来品は袋状で心臓全体を覆うタイプだったため、心臓の各部位にかかる圧力の調整はできなかった。左心室に十分な圧力をかけると、左心室より壁が薄い右心室に圧力がかかりすぎて機能が落ちる欠点が指摘されていた。この点を踏まえ、開発したネットは右心室の部分を大きく開ける独自の形状を採用した。
ネットの開発は10年前に着手。今年6月には、実用化につながる基礎研究を後押しする文部科学省の事業で支援対象に選ばれ、14年度に8000万円の支援を受ける。今後は14年中に動物実験で安全性や効果を検証し、15年以降、人への臨床試験を金沢医科大などで計画している。心臓ネットを使った治療は欧米で2000年代に前例があるが、日本では例がない。まずは実用化を急ぎ、当面は約1000人の治療に役立てることを目指している。 (高橋淳)
(2014年9月5日 北陸中日新聞朝刊1面より)
研究者代表の秋田利明・金沢医科大教授(58)は「移植や人工心臓治療しか選択肢が残されていない段階に進む患者を減らせる」と期待している。
共同研究者は、ほかに大阪大や医療機器開発製造の「東海メディカルプロダクツ」(愛知県春日井市)など。ネットは、磁気共鳴画像装置(MRI)による心臓の画像から取得した三次元モデルを基に作る。モデルを活用してネット装着時の圧力のかかり方などをソフトで詳細に解析、設計する技術を確立した。実際の製作には、縫製なしで立体的に編めるコンピューター制御の編み機を使う。
グループが研究の参考にした米国製の従来品は、6種類のサイズ設定。外科医が手術中に切って大きさを合わせなければならず、効果がばらついた。開発したネットは調整の必要がないため手術時間を短縮でき、患者への負担も小さい。
また、従来品は袋状で心臓全体を覆うタイプだったため、心臓の各部位にかかる圧力の調整はできなかった。左心室に十分な圧力をかけると、左心室より壁が薄い右心室に圧力がかかりすぎて機能が落ちる欠点が指摘されていた。この点を踏まえ、開発したネットは右心室の部分を大きく開ける独自の形状を採用した。
ネットの開発は10年前に着手。今年6月には、実用化につながる基礎研究を後押しする文部科学省の事業で支援対象に選ばれ、14年度に8000万円の支援を受ける。今後は14年中に動物実験で安全性や効果を検証し、15年以降、人への臨床試験を金沢医科大などで計画している。心臓ネットを使った治療は欧米で2000年代に前例があるが、日本では例がない。まずは実用化を急ぎ、当面は約1000人の治療に役立てることを目指している。 (高橋淳)
(2014年9月5日 北陸中日新聞朝刊1面より)