進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て

中日新聞掲載の大学記事

2014.07.06

はやぶさ2 今冬宇宙へ 生命の起源探る旅再び

■科学調査 渡辺・名大教授が統括

 エンジン故障から奇跡の生還を果たし、小惑星イトカワの砂を地球へ持ち帰った「はやぶさ」の2号機が今冬、打ち上げられる。「1999JU3」という小惑星から地表などの物質を採取する予定で、生命の起源を知る手掛かりを持ち帰る重要な任務に挑む。科学調査を取りまとめる責任者は、名古屋大の渡辺誠一郎教授(地球惑星物理学)。「新しい発見に出合うのが楽しみ」と心待ちにしている。(社会部・今村太郎)

 1999JU3は、地球と同様に太陽の周りを回る星で、水や有機物が存在する可能性が指摘されている。生命の起源については、地球上の炭素化合物から生じたとする説と、宇宙から隕石(いんせき)で運ばれた有機物が進化した説がある。「はやぶさ2」が無事に物質を持ち帰れば、その謎を解く手掛かりになる。

 渡辺教授は、2010年に帰還したはやぶさには関与していなかった。帰還後、世論の後押しで2号機の打ち上げが決まった12年10月、科学調査体制が強化されることになり、惑星科学の研究で知られる渡辺教授に白羽の矢が立った。

 計画には国内外の計100人以上の科学者がかかわる。渡辺教授は統括責任者の「プロジェクト・サイエンティスト」として意見をまとめる。どんな研究が可能か、搭載する機材をどう使うかなど、既に10回以上の会議を重ねて計画に反映させている。

 1999JU3に到着するのは18年。まず、赤外線観測装置や光学カメラで地表の水分量や温度を調べ、着地点を決める。地表から2度、砂や石を採取するほか、火薬を使って銅製の弾丸を地表に衝突させて深さ数10センチのクレーターをつくり、地中からも物質を採取する。表面が高温のため、物質を採取する際、着地から再上昇までに許される時間はわずか1秒。初代はやぶさも失敗を重ねた、最大の“難所”だ。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、前回の教訓を受け、はやぶさ2はエンジンやアンテナを強化。渡辺教授は「何らかのトラブルは起きるだろう。そのために地上で十分に想定し、備えることが大切」と話す。往復数10億キロに及ぶ宇宙の旅が順調に進めば、はやぶさ2は、東京五輪の20年に帰還し、盛り上がりに一役買う。渡辺教授は「思い込みをひっくり返してくれるような、驚くような発見を期待したい」と話している。

【はやぶさ】 2003年5月に打ち上げられ、地球と火星の間を回るイトカワへ旅立った。05年11月に到着したが、地球へ戻ろうとした際に燃料漏れが起き、電波を送れなくなるなどトラブルが相次いだが、研究者らが電波を探し出し、エンジンを駆使して帰還させた。イトカワの砂を含んだカプセルは、10年6月にオーストラリアの砂漠に落ち、回収された。

(2014年7月6日 中日新聞朝刊1面より)
  • X

戻る < 一覧に戻る > 次へ