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中日新聞掲載の大学記事

2013.08.23

『カラマーゾフの兄弟』 謎解きに挑戦しよう 名古屋外国語大学長 亀山郁夫さん

 ドストエフスキー(1821〜81年)最晩年の作品「カラマーゾフの兄弟」を読み解く「謎解き『カラマーゾフの兄弟』」が10月から、栄中日文化センターで始まる。講師の名古屋外国語大学長でロシア文学者の亀山郁夫さんは「世界最高の小説で最高のミステリーだと思います。これほど面白く、しかも深い小説はありません。難解といわれますが、これを克服できたら何も怖くなくなりますよ」と誘う。

 亀山さんはこの小説の翻訳にも取り組み、2007年に全5巻が光文社から出版された。これを基に講座の1〜5回までは「1回1巻ずつ徹底的に読みましょう」と亀山さん。「父殺し」の真犯人捜しを中心に捉え、謎に満ちた数々のディテールの意味を、ドストエフスキーの生涯と照らし合わせつつ罪、愛、信仰とは何か−などの根本的な問題をめぐる作者の世界観を探る。

 最終回は「続編(第2の小説)を空想する」がテーマ。亀山さんによると、ドストエフスキーは当初から、続編・第2の小説を書くつもりで「それは13年後のこと」としていた。突然の死で幻になってしまったが、亀山さんの精密な作品分析を通して、どんな骨格と内容を持つはずだったのかを考える。

 カラマーゾフ家の三男・アリョーシャが13年後には33歳になることにどんな意味があるのか、自称「社会主義者」の少年の行動とアリョーシャの関わりは、そして結末でどんなロシアの未来が示されるのか。興味津々の「亀山説」は講座で明らかになる。

 中学生のときに「罪と罰」を読んでドストエフスキーの世界に引き込まれたという亀山さん。「『カラマーゾフの兄弟』を完訳したことで『本当のロシア文学者になったな』と思いました」としみじみ語る。多忙な中で今、本紙夕刊「紙つぶて」の執筆も。「『運命』をテーマに『運命と偶然はどう違うのか』などを楽しく書いてます」と笑う。「内緒ですが『カラマーゾフの兄弟』を題材にした小説も書き始めています」とそっと教えてくれた。「内緒」の内容も講座で明かしてくれるかもしれない。

 第3木曜午前10時30分からで、6カ月分1万3860円。新入会は入会金3675円別途必要。申し込みは同センター=フリーダイヤル(0120)538164=へ。

(2013年8月23日 中日新聞朝刊市民版より)
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