介護福祉士を養成する大学や専門学校が深刻な定員割れに陥り、転機を迎えている。厚生労働省が９月にまとめた調査では、今春の全入学者数は総定員の４６％にとどまった。生徒募集を取りやめる学校が相次ぐ中、２年制から４年制に教育システムを移行して、人気回復を目指す動きも目立っている。　（社会部・島崎諭生）

専門性の高さアピール

　今春から生徒募集をやめた名古屋市近郊の専門学校経営者は「昨年は入学者が、定員４０人の３割にとどまった。学校として成り立たず、存続できないと決断した」と語った。２年生が卒業する来春、介護職員養成の分野からは手を引く予定だ。

　卒業後に就職する介護の現場に「きつい、厳しい、汚い」といったイメージが広がり、「安い給料では割が合わない」と高校生らが敬遠。養成学校の乱立も、激しい生き残り競争を招いた。

　実際に厚労省の２００５年調査では、介護施設に勤務する介護福祉士の平均年収は、男性が３１５万円、女性が２８１万円。全労働者平均の４５２万円を大きく下回る。

　そんな中、２年制から４年制に移行し、専門性の高さをアピールする学校も増えてきた。４年制の大学や専門学校は２０００年には１７校だったが、現在は６７校もある。

日本福祉大『ダブル資格』取得目指せる

　日本福祉大（愛知県美浜町）は今春、系列で２年制の高浜専門学校（同県高浜市）の生徒募集を終了。代わりに、４年制の同大半田キャンパスの「健康科学部リハビリテーション学科」に介護学専攻を設けた。４年間で介護福祉士と社会福祉士の「ダブル資格」取得を目指せ、リハビリという医療技術も学べる。

　７、８月のオープンキャンパスの参加者数は、昨年より４割増えた。水谷なおみ助教は「幅広い知識を身に付ける授業に、関心を持ってもらっている」と手応えを口にした。

　東海学院大（岐阜県各務原市）も同様に今春、２年制の短大部門の介護福祉学科の生徒募集をやめ、４年制の介護福祉コースを新設。文化女子大長野専門学校（長野市）も授業を４年制に拡大した。

　介護福祉士養成課程を持つ４年制大学のうち１７校は今年７月、連絡協議会を設立。教育の質を高め、高校生らにアピールしようと活動を始めた。同協議会の発足にかかわった十文字学園女子大（埼玉県新座市）の丸山晃講師は「質の高い人材を養成することが、現場の待遇改善や地位向上に結び付くはず。大学での教育を、介護職の明るい未来づくりにつなげたい」と話している。

（写真）介護福祉士と社会福祉士のダブル資格取得を目指して学ぶ学生ら。介護福祉士の養成を４年制で扱う学校が増えている＝愛知県半田市の日本福祉大半田キャンパスで

（2008年9月29日　中日新聞朝刊9面より）