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2013.02.07
統合失調症モデルマウス 予防・治療法開発に期待 藤田保健衛生大・生理研が発表
藤田保健衛生大(愛知県豊明市)と自然科学研究機構生理学研究所(同県岡崎市)などの共同チームは、特定の遺伝子を働かなくしたマウスが統合失調症の患者とそっくりな行動異常を示すことを突き止めた。
このマウスをモデル動物にすれば、統合失調症の新しい予防や診断、治療法の開発につながるという。成果は米国神経精神薬理学会誌の電子版で発表された。
研究チームは脳内のタンパク質の一種「シュヌリ2」に注目。遺伝子操作で、このタンパク質に関与するDNAを働かなくしたマウスは、認知障害や陰性症状といった人間の統合失調症患者で見られる症状とよく似ており、巣作りなどの行動に異常が現れることが分かった。
発症したマウスの脳を解析したところ、脳内の情報伝達にとって重要な「ギャバ」という化学物質を放出する神経細胞(ニューロン)の減少や脳波の異常が見られ、統合失調症患者の脳の研究で報告されている特徴が多くあった。
研究チームはマウスの脳で慢性的な軽い炎症が起こっていることや、脳の一部が未成熟であることも発見。この炎症を抑えると、未成熟な状態や、行動異常の一部が改善した。
チームの宮川剛・藤田保健衛生大総合医科学研究所教授(神経科学)は「抗炎症薬と向精神薬を組み合わせた投与の効果を、このモデルマウスを使って調べることで、統合失調症の新しい予防法や治療法の開発が進むと期待される」と話している。
■統合失調症
あらゆる人種や地域で総人口の1%程度が発症し十分な予防・治療法が確立されていない精神疾患。妄想や幻覚といった陽性症状、意欲や社会性の低下、無関心といった陰性症状、認知障害が認められる。遺伝と環境の両方の要因が発症に関与するとされる。
(2013年2月7日 中日新聞朝刊3面より)
このマウスをモデル動物にすれば、統合失調症の新しい予防や診断、治療法の開発につながるという。成果は米国神経精神薬理学会誌の電子版で発表された。
研究チームは脳内のタンパク質の一種「シュヌリ2」に注目。遺伝子操作で、このタンパク質に関与するDNAを働かなくしたマウスは、認知障害や陰性症状といった人間の統合失調症患者で見られる症状とよく似ており、巣作りなどの行動に異常が現れることが分かった。
発症したマウスの脳を解析したところ、脳内の情報伝達にとって重要な「ギャバ」という化学物質を放出する神経細胞(ニューロン)の減少や脳波の異常が見られ、統合失調症患者の脳の研究で報告されている特徴が多くあった。
研究チームはマウスの脳で慢性的な軽い炎症が起こっていることや、脳の一部が未成熟であることも発見。この炎症を抑えると、未成熟な状態や、行動異常の一部が改善した。
チームの宮川剛・藤田保健衛生大総合医科学研究所教授(神経科学)は「抗炎症薬と向精神薬を組み合わせた投与の効果を、このモデルマウスを使って調べることで、統合失調症の新しい予防法や治療法の開発が進むと期待される」と話している。
■統合失調症
あらゆる人種や地域で総人口の1%程度が発症し十分な予防・治療法が確立されていない精神疾患。妄想や幻覚といった陽性症状、意欲や社会性の低下、無関心といった陰性症状、認知障害が認められる。遺伝と環境の両方の要因が発症に関与するとされる。
(2013年2月7日 中日新聞朝刊3面より)