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2012.08.10
ロンドン 県勢の夢舞台 陸上男子1600リレー 愛教大院・中野選手 走る楽しさ追い続け
【ロンドン=垣見洋樹】赤茶色の表面がボロボロに傷んだ陸上トラック。短距離専門の指導者は不在。遠征費は全額自前。ロンドン五輪陸上男子1600メートルリレー予選に9日、出場した愛知教育大大学院生、中野弘幸選手(23)=安城市出身=の自立心は陸上の名門大とはかけ離れた環境で培われた。
「何かが足りないなら、どう補えばいいのか。子どもたちの生きる力を育む職業を目指すからこそ、自ら解決する力を身に付けなければ」。教師を志して進学した愛教大。陸上で世界の舞台に立つために足りないものは数えきれなかったけれど、自由があった。頼れるのは自分だけ。その状況が非凡な才能を引き出した。
強豪校の名古屋高で過ごした高校時代。専門的な指導に多くの選手が記録を伸ばすなか、消化しきれなかった。「手や脚をどう動かすとか、細かいことが気になってしまって」
大学進学後は奔放な雰囲気の中、思い切って走ることの大切さを思い出した。まずは体が求めるままに走り続けた。フォームを改良し、400メートルの記録を3秒以上縮めた。
遠征費を稼ぐためにラーメン店でアルバイトを続けながら、小学校の教員免許を取得。来春からは愛知県内で教壇に立つ予定だ。
「五輪選手を育てたいなんて気持ちはない。子どもたちが運動の楽しさに気づき、ずっと続けてほしい」。思いの原点は小学生のころ、陸上選手だった父俊一さん(54)から掛けられた一言。「俺は練習が嫌いで仕方なかった。だから楽しんでやっている弘幸はすごい。続けて」
9日の予選ではアンカーとして出走。決勝進出を逃したがレース後、まだ弾む声でこう話した。「ぼくが五輪で走るところを子どもが見て、好きなことを追求すれば世界に届くという夢を持ってもらえたら、うれしい」
(2012年8月10日 中日新聞朝刊県内版より)
「何かが足りないなら、どう補えばいいのか。子どもたちの生きる力を育む職業を目指すからこそ、自ら解決する力を身に付けなければ」。教師を志して進学した愛教大。陸上で世界の舞台に立つために足りないものは数えきれなかったけれど、自由があった。頼れるのは自分だけ。その状況が非凡な才能を引き出した。
強豪校の名古屋高で過ごした高校時代。専門的な指導に多くの選手が記録を伸ばすなか、消化しきれなかった。「手や脚をどう動かすとか、細かいことが気になってしまって」
大学進学後は奔放な雰囲気の中、思い切って走ることの大切さを思い出した。まずは体が求めるままに走り続けた。フォームを改良し、400メートルの記録を3秒以上縮めた。
遠征費を稼ぐためにラーメン店でアルバイトを続けながら、小学校の教員免許を取得。来春からは愛知県内で教壇に立つ予定だ。
「五輪選手を育てたいなんて気持ちはない。子どもたちが運動の楽しさに気づき、ずっと続けてほしい」。思いの原点は小学生のころ、陸上選手だった父俊一さん(54)から掛けられた一言。「俺は練習が嫌いで仕方なかった。だから楽しんでやっている弘幸はすごい。続けて」
9日の予選ではアンカーとして出走。決勝進出を逃したがレース後、まだ弾む声でこう話した。「ぼくが五輪で走るところを子どもが見て、好きなことを追求すれば世界に届くという夢を持ってもらえたら、うれしい」
(2012年8月10日 中日新聞朝刊県内版より)