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2012.01.06
手術で開けた骨の空洞 再生促進へ新素材 名工大教授ら 米で臨床試験へ
椎間板ヘルニアや骨肉腫などのがんの手術で骨に開けた空洞に詰め、早期の再生を促す綿状の新素材を、名古屋工業大の春日敏宏教授らのグループが開発した。研究レベルでは紙状の素材も同時に完成。2012年中に米国で臨床試験をスタートさせる。
現在の医療現場では、開いた穴に本人から取った骨を整形して詰める方法が一般的だ。しかし、患者に負担がかかるうえ、骨は硬くて整形が難しく、穴にうまく合わないため空洞が残ってしまう恐れがあった。
新素材には骨の原料のカルシウムと細胞を活発に働かせるケイ素などを使用。材料を混ぜ合わせて、通常の綿繊維の10分の1の太さに相当する直径10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)〜15マイクロメートルの糸状に加工し、紙や綿のようなシート状に整える。
新素材の繊維はしっかりと空洞を埋められると同時に、押し込んでも再生された細胞が入ってこられるわずかな隙間が残る太さ。実際に使った場合には体内で徐々に溶けて最終的にはなくなってしまう。
ウサギを使った実験では、自分の骨で空洞を埋めた際と同じ4週目で再生が始まり、素材は半年で体内から消えた。セラミックを活用する素材もあるが、再生開始まで2〜3カ月も必要となるうえ、値段が新素材の倍近い。
春日教授は「高齢化が進む日本でこそ骨再生の技術が重要だ」と強調しているが、認可に10年近くかかるため、米国での臨床試験を選択した。
「米国なら臨床試験をしながら販売もできる。本当は日本で臨床試験をしたかった」と話している。
(2012年1月6日 中日新聞朝刊30面より)
現在の医療現場では、開いた穴に本人から取った骨を整形して詰める方法が一般的だ。しかし、患者に負担がかかるうえ、骨は硬くて整形が難しく、穴にうまく合わないため空洞が残ってしまう恐れがあった。
新素材には骨の原料のカルシウムと細胞を活発に働かせるケイ素などを使用。材料を混ぜ合わせて、通常の綿繊維の10分の1の太さに相当する直径10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)〜15マイクロメートルの糸状に加工し、紙や綿のようなシート状に整える。
新素材の繊維はしっかりと空洞を埋められると同時に、押し込んでも再生された細胞が入ってこられるわずかな隙間が残る太さ。実際に使った場合には体内で徐々に溶けて最終的にはなくなってしまう。
ウサギを使った実験では、自分の骨で空洞を埋めた際と同じ4週目で再生が始まり、素材は半年で体内から消えた。セラミックを活用する素材もあるが、再生開始まで2〜3カ月も必要となるうえ、値段が新素材の倍近い。
春日教授は「高齢化が進む日本でこそ骨再生の技術が重要だ」と強調しているが、認可に10年近くかかるため、米国での臨床試験を選択した。
「米国なら臨床試験をしながら販売もできる。本当は日本で臨床試験をしたかった」と話している。
(2012年1月6日 中日新聞朝刊30面より)