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お知らせ  2024.12.26

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膵臓がん世界初の治療法 ホウ素と中性子の核反応で攻撃

■照射1回 藤田医科大 28年試験開始

 藤田医科大(愛知県豊明市)は、ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を死滅させる「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の施設を新設し、難治性の膵臓(すいぞう)がんなどの治療を世界で初めて目指す。治療は1回の照射で済み、患者の身体的な負担が少ないのが特徴。現在は頭頸部(けいぶ)がんに限って保険適用されているが、膵臓がんなど体の深部のがんを対象に2028年から臨床試験を始める。(平井良信)

 BNCTは、手術や化学療法、放射線治療、免疫療法に続く、第5の治療法として注目される。がん細胞にホウ素が取り込まれやすくなる薬剤を患者に点滴し、加速器と一体となった特殊な装置で中性子を照射する。ホウ素と中性子の核反応で発生した粒子が、がん細胞を破壊。粒子が飛ぶ範囲は細胞1個分で、他の細胞を傷つけることなくがんを治療できる。

 20年に切除不能な頭頸部がんで保険適用が認められ、現在は福島県と大阪府内の専用施設で治療を受けられる。治療は1回1時間程の照射でよく、他の治療法に比べて治療期間が短い。治療費は約450万円(保険適用で自己負担3割の場合は約135万円)で、7割の患者にがんが縮小する効果が見られた。

 藤田医科大は、このBNCTをさらに発展させ、日本人のがんの死因で3番目に多い膵臓がんの治療に活用する。従来の装置は中性子が体の奥に届く範囲は深さ6~8センチだったが、膵臓などより深い所にも届くように装置の出力を2倍にする。装置を開発、製造する住友重機械工業(東京)と研究開発を推進する覚書を今月24日に結んだ。

 また、がん細胞に取り込ませたホウ素の濃度が高い方が治療の効果が高く、濃度を高めるための薬剤の開発を大阪大と協力して行う。BNCTの装置の実験などを手がける京都大とも協力する。

 大学敷地内に垂直型の装置が入るコンクリート製の3階建て施設を建設し、28年6月に運転を開始して臨床研究を始める。将来は保険適用を目指す。事業費は100億円以上になる見込み。大学を運営する藤田学園の星長清隆理事長は「生存率の低い膵臓がんの患者を助けるための施設を世界に先駆けて整備したい」と話している。

(2024年12月26日 中日新聞朝刊1面より)

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