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お知らせ  2022.03.31

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学生交流 仮想空間で 金沢工大 メタバース活用 英語ラウンジなど 新年度に実用化

(下)3大学で実施したワークショップのメタバース画面。大学キャンパス風の空間にアイコンが集まる。右上に参加学生の映像、左上に参加者で共有した資料が映し出された

(下)3大学で実施したワークショップのメタバース画面。大学キャンパス風の空間にアイコンが集まる。右上に参加学生の映像、左上に参加者で共有した資料が映し出された

 新型コロナウイルスの影響でオンラインでの交流が急速に進化している。各業界から熱視線を浴びるインターネット上の仮想空間「メタバース」を、金沢工業大(石川県野々市市)が全国でいち早く、教育現場で活用し始めた。昨年4月からの試験導入を経て、新年度からは学内で実用化し、学生の学びに生かそうとしている。 (古谷祥子)

 ロビーや個室がレイアウトされたパソコン上の画面に机やいす、ソファが並ぶ。大学のキャンパス風の二次元空間は、ゲームの一場面のようにも見える。学生や教員の名前が書かれたアイコンが集まっている場所に自分のアイコンを近づけると、自動的に会話が聞こえ、同時に学生らの映像と資料が映し出された。「SNS(会員制交流サイト)はどのくらい使ってる?」「フォロワーが少なくて…」。この日の議題だった大学の効果的なPR方法について、参加者が活発に意見を交わしていた。

 これは3月上旬、金沢工大と北陸大、金城大短大の3大学がメタバースで開いた学生参加のワークショップの様子だ。石川県七尾市に本社を置くIT企業「oVice(オヴィス)」が提供するシステムを利用し、各校をつないだ。学生の感想は「一体感が感じられた」「コロナ下の手段として柔軟性がある」など好評だった。

 「ズーム」など一般的なオンライン会議システムとの違いは、視覚的な分かりやすさにある。参加者は自分のアイコンを画面上で動かすだけで、同時進行している複数の会議やイベントを行き来したり、他の参加者の動きを確認したりできる。現実世界の催しで会場を移動するように、距離感をとらえやすい。

 また、決められた時間にしかやりとりできないオンライン会議システムと異なり、24時間いつでも接続でき、仮想空間に誰かがいれば、現実のキャンパスで出会ったようにすぐに交流ができる。工学部ロボティクス学科の河合宏之教授は「教育現場にこれまであったネット上のサービスよりも、人のつながりを感じやすくなる」と期待する。

 新型コロナウイルスの流行は、メタバースの開発と利用を加速させた。金沢工大は2020、21年度の授業は対面を制限し、オンラインと半々で併用して乗り切った。20年3月には情報処理学会が、学術界で初めて全国大会をメタバースで開催。この大会はVR(仮想現実)など最先端技術を研究対象としてきた金沢工大が開催校を務めた。こうした経験から、昨年4月に学内教員向けにメタバースの勉強会をつくった。

 新年度からは、コロナ禍で休止していた教員と学生が英語で交流する学内ラウンジを、メタバースで実施し、本格活用に乗り出す。基礎教育部英語教育課程の藤井清美教授は「マスクを外して語学学習ができるし、他学生の参加具合も分かるので互いに刺激し合える」と期待している。

 メタバース メタ(超越)とユニバース(宇宙)を掛け合わせた造語で、ネット上の仮想空間を表す。米フェイスブックが昨年?月、社名を「メタ」に変更し、本格参入を表明した。仮想空間にいる自身のアバター(分身)を通じて利用者同士の交流を図るゲームや、暗号資産(仮想通貨)を用いた商取引などが活況。カナダの調査会社によると、2020年の世界市場規模は、476億9000万ドル(約5兆6000億円)。28年には8289億5000万ドルに達すると見込む。
 
(2022年3月31日 北陸中日新聞朝刊1面より)

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