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お知らせ  2019.11.15

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中央アジア起源 世界一美しい紙 「サマルカンド紙」復元 愛知県芸大 あす試作品発表

「サマルカンド紙」の復元を目指す柴崎幸次教授(右)と非常勤講師の浦野友理さん。浦野さんが持つのが、ウズベキスタンの麻布を使ってすいた紙=愛知県長久手市の県立芸術大で(太田朗子撮影)

「サマルカンド紙」の復元を目指す柴崎幸次教授(右)と非常勤講師の浦野友理さん。浦野さんが持つのが、ウズベキスタンの麻布を使ってすいた紙=愛知県長久手市の県立芸術大で(太田朗子撮影)

 かつて、世界で最も美しい紙の一つとされながら、200年前に製造技法が失われた中央アジアの「サマルカンド紙」。その調査や復元に取り組んできた愛知県立芸術大(同県長久手市)の柴崎幸次教授(デザイン専攻)らが、世界のさまざまな紙の手すき技法を参照し、試作品を制作することに成功した。16日に名古屋市内で開かれる国際セミナーで発表する。(芦原千晶)

 サマルカンド紙は、ツヤや張りがあり、硬筆のインクがにじみにくい特長がある。8世紀後半からウズベキスタンの古都サマルカンドで作られ、イスラム教の聖典コーランや細密画に使われていた。原材料は、現地ではクワと伝わるが、古い麻布や綿が使われていることが分かってきた。

 県立芸大は4年前、ウズベキスタンの国立芸術大と学術交流協定を締結。国内を中心に和紙や製紙の技術を研究してきた柴崎教授が、サマルカンド紙の調査や復元、紙文化の伝搬の解明を担うことになった。

 国立芸術大などからサマルカンド紙の貴重な実物を借りて成分を調査したところ、12~15世紀ごろの紙はいずれも麻布が原材料だと判明した。ただ、古布から紙を作る技術は世界でほとんど残っておらず、紙の手すき技術に詳しい非常勤講師の浦野友理さんと共に復元に取り組んできた。

 材料や手すきの技法を変えながら、2年半の間に30種類ほどの紙を試作。ことし9月、現地の麻布を水で煮て、オランダ製の機械で10時間以上すりつぶし、中国製の道具で紙をすくことで、本物に近づけることに成功した。

 柴崎教授は「本物に比べるとまだ60点ほどの出来だが、ウズベキスタンの麻布を使って、張りがあり、密度が高いなめらかな紙ができたことは評価できる」と話す。

 サマルカンド紙は、時代によって原材料や質が変わる。柴崎教授は人工知能のディープラーニングの手法を使い、紙の表面を写したデジカメのマクロ画像から原材料を高確度で判別する技術を、愛知県立大の神谷直希准教授(画像工学)と共に開発してきた。

 「各時代のサマルカンド紙を復元し文化財の修復に役立てたり、周辺の紙を調べて紙文化の伝搬の解明につなげたりしたい」と語る。

(2019年11月15日 中日新聞夕刊1面より)

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