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中日新聞掲載の大学記事

2017.01.07

認知症模擬患者を養成 愛知県立大 医療現場の対応改善へ

■優しい看護 学生に教えて

 看護師の卵に認知症患者への正しい対応方法を学んでもらおうと、愛知県立大看護学部(名古屋市)は、認知症の人の態度や思いを表現できる模擬患者の養成講座を開いている。模擬患者とのやりとりを通して、一見理不尽な行動にもその人なりの思いがあることを知り、より良い医療につなげるのが狙い。同大によると、認知症の模擬患者養成は全国的にも珍しいという。 (出口有紀)

 「エックス線を撮るなんて、聞いとらん。スーパーに来ただけや」。強い口調で検査を拒否する模擬患者の男性。看護師を目指す女子学生が「奥さんが心配していますよ。検査しましょう」と何度もなだめると、男性は次第に語気が弱まり、落ち着いた表情を取り戻した。

 昨年12月中旬に名古屋市内で開かれた養成講座。模擬患者を目指して受講している53〜61歳の男女5人が、学生とのロールプレー(役割演技)に臨んだ。4分間の演技を終えると、模擬患者と学生の双方の表情が緩んだ。

 模擬患者を務めたうちの1人で、ケアマネジャーの柴田清子さん(53)=同市名東区=は「看護師の威圧的な態度は、当事者には嫌な思いとして残る。対応がいい方向になるよう役作りをしたい」と話す。

 これまで、がんやアルコール依存症に扮(ふん)する模擬患者の養成は、全国の医療系大学などで行われてきた。しかし、認知症の人に接する機会が少ない学生たちが、看護実習などの場で戸惑うケースもあったため、同大が昨年度から養成講座を始めた。認知症の人と家族の会県支部(愛知県東海市)に協力を呼び掛け、家族の介護を経験した人を中心に、本年度までに13人が講座を終えた。

 認知症は医療職の理解が不足していると、患者本人や家族が傷つくことが多いため、認識を深めるのは不可欠。百瀬由美子看護学部長(60)は「学生のとった行動や言葉掛けなど、模擬患者に具体的に言ってもらえると、学生の気づきになります」と指摘する。

 模擬患者との演技を行った同大4年の倉知佐緒里さん(22)は「学生同士ではなれ合いになって、うまくいかない。模擬患者と接すると、自分の対応をじっくり考えられます」と話していた。

■認知症

 物忘れや場所や日時が分からなくなる見当識障害などの症状のほか、物を盗まれたなどの妄想を抱く場合もある。患者は今後急増し、8年後の2025年には、全国で現在の1.5倍の700万人に達すると予測されている。

(2017年1月7日 中日新聞夕刊1面より)
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