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中日新聞掲載の大学記事

2015.09.23

軍事可能研究 16大学が応募 愛工大など 防衛省が費用支給

 小型無人機やサイバー攻撃対策など軍事技術への応用が可能な基礎研究に研究費を支給する防衛省の初の公募に、東京工業大や岡山大など少なくとも16大学が応募したことが分かった。共同通信が理工学、医学部門を持つほぼ全ての国立大と主な公立、私立大、計93大学を対象にアンケートした。

 国内の大学は太平洋戦争に協力した反省から、長らく軍事研究から距離を置いてきたが、公募は民生用にも使える基礎研究に限定し、成果の公開を原則としたことから一定数の応募があったとみられる。一方で専門家からは「軍学共同研究」が歯止めなく広がり、学問の自由が脅かされる懸念を指摘する声も出ている。

 防衛省は7〜8月に「小型飛行体実現に役立つ基礎技術」「サイバー攻撃対処」など28項目の研究課題について研究者を公募。予算総額は3億円。採択されると最大で年3000万円の研究費が支給される。防衛省は近く採択結果を発表する。

 アンケートに「応募あり」と答えたのは静岡大、岐阜大、愛知工業大、香川大、鹿児島大など。大阪市立大と東京都市大は複数応募したという。また、17大学が軍事利用可能な研究への対応について明確なルールを持っていた。

 応募した大学のうち、千葉工業大は「兵器・軍事技術に関する研究を行わない」との基本理念があるが「自衛隊の救助活動、災害対応技術で、兵器・軍事への利用可能性は皆無」などと説明。関西大も「軍事目的の研究は禁止」との倫理基準を持つが、応募に当たって「直接的な軍事利用を目的としていないとの文書の提出を研究代表者に求めた」とした。

 東京大、慶応大、金沢大、名古屋大、大阪府立大、鳥取大など9大学は回答できないとした。東京大は、今年1月に軍事研究の禁止に関する声明を出しており、これを踏まえて研究者や部局で判断して対応するとした。


■心の中に警戒心を 近著『科学者は戦争で何をしたか』で科学者と軍事の関係を取り上げた、益川敏英・名古屋大特別教授(ノーベル物理学賞受賞者)の話

 アンケートでは応募した大学は少数派で、今のところはまだ歯止めがきいていると感じた。今後、背に腹は代えられないと応募する例が増えるかもしれないが、平和な今のうちに、研究の軍事利用について真剣に考えておくべきだ。防衛省の公募は始まったばかりで軍事利用の色合いは薄いが、そのうちだんだん濃くなっていくだろう。研究者は心の中に警戒心を持っていないといけない。

(2015年9月23日 中日新聞朝刊3面より)

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