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中日新聞掲載の大学記事

2014.11.18

文学部の意義を再確認 椙山女学園大で来月フォーラム

 椙山女学園大(名古屋市)の国際コミュニケーション学部が12月6日、同大で「国際文化フォーラム」を開く。「物語の森にざわめく言葉」と題して芥川賞作家の黒田夏子さんらが討論するこの催しには、ある狙いがこめられている。企画した同大教授の小川雅魚(まさな)さんは「文学部は不要か?という問いに対する一つの応答」というのだ。

 小川さんによると、この企画の発端は今年4月11日、本紙が夕刊文化面で掲載した論考「文学部が消える?」。筆者は名古屋大大学院文学研究科の塩村耕教授。大学で実学の重視が進み、学生からも「就職に不利」として敬遠される文学部の「青息吐息の状況」を伝え、「人文学の疲弊は、国全体の潜在力の低下をまねく」と訴える内容だ。

 これに愛知淑徳大の山田登世子教授が、同27日の本紙朝刊で「留飲の下がる思い」と賛意を表明。「底が浅く、幅のない技術人間が増えてゆくのはまさに国力の低下につながる」と述べた。

 こうした研究者らの懸念の一方で文部科学省は国立大に対して今年、人文社会科学系や教員養成系の組織の廃止などを含む改革案を通達。これについては中村桂子・JT生命誌研究館長が、10月1日の本紙朝刊文化面で「大学の本質を否定する」と厳しく批判している。

 小川さんも「日本の大学では20年ほど前から、幅広く教養を学ぶ課程を薄くし、専門家を育てようとしている。専門の世界の中だけなら通用するが、ものごとを横断的に考える力や連想力が弱まっており、これからの時代に逆行する」と分析。そうした問題意識を踏まえて、今回のフォーラムを企画したという。

 討論に参加する黒田さんは昨年、芥川賞を75歳の最高齢で受賞して話題を呼んだ作家。その受賞作『abさんご』は、日本語だが横書きで平仮名を多用する挑戦的な小説だ。「黒田さんの作品と発言から日本語の表記や可能性を考えたい」と小川さん。

 黒田さんのほか▽作家で心理学者の堀田あけみ・椙山女学園大准教授▽スペインからの独立問題で注目を集めるカタルーニャの言語や翻訳の第一人者である田澤耕・法政大教授▽米国出身で比較文学研究者の満谷マーガレット・共立女子大教授−といった多彩な顔ぶれの計7人がパネル討論をする予定。小川さんは「言葉を多彩な角度から考えるとともに、文学部や人文系の研究が遊びではなく、人間を知りそのコミュニケーションを考える上で、実は最も重要であることを問い直したい」と意欲的だ。(三品信)

 フォーラム「物語の森にざわめく言葉」は12月6日後1・30、名古屋市千種区星ケ丘の椙山女学園大メディア棟001教室。入場無料。希望者は直接会場へ。

(2014年11月18日 中日新聞朝刊15面より)
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