藤田保健衛生大病院（愛知県豊明市）が申請していた内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」を使った胃がん手術が、国の専門家会議で先進医療として承認された。胃がんでのロボット支援手術の承認は初めて。先進医療は保険診療との併用が認められ、手術費以外の入院費などが公的医療保険の対象になり、自己負担が大幅に減る。１０月にも先進医療として手術が受けられる見通し。

　ダビンチを使った手術は、前立腺がんで既に公的医療保険の対象になっているが、胃の手術は対象外。これまで手術費や入院費など全額が自己負担だった。同大はダビンチを導入した２００９年から全額自己負担による胃の手術を始め、これまでに１９６例の実績がある。

　同病院上部消化管外科の宇山一朗教授によると、胃がんでは、傷が小さく、入院期間が短くなる腹腔（ふくくう）鏡手術も行われているが、手術後の合併症発生率は通常の手術と同程度だった。これに対しダビンチ手術では、５分の１程度に減った。従来の手術では膵臓（すいぞう）に電気メスが当たり炎症を起こすケースが見られたが、ロボットは関節が多く手ぶれも防止できるため、より安全な手術が実現できたという。

　ほかに複数の医療機関が実施施設に加わる見込み。ダビンチの製造企業が手術費５０万円を補助するため、これまで２００万円以上かかっていた自己負担は、実質的には７０万円ほどになるという。

　手術費にも公的医療保険の適用を目指し、２年間で３３０例の症例を積み重ね、手術の効果などを検証する。宇山教授は「将来、ロボットの導入コストが下がれば、さまざまな利点があるロボット支援手術をさらに拡大できる可能性がある」と話している。

　ダビンチは４本のアームがあり、医師は１本のアームについた内視鏡の三次元画像を見ながら３本のアームを使って手術する。

■腎がんでも一部　先進医療、名市大参加

　ダビンチによる手術では、腎がんの部分切除も９月から一部に公的医療保険が適用される先進医療になった。神戸大病院（神戸市）が承認を受け、名古屋市立大病院（名古屋市瑞穂区）なども１０月以降、協力機関として手術できるようになる見込み。

　従来の腹腔鏡手術と比べて難しい部位も手術しやすくなり、腎臓への負担を小さくできる。名市大病院は１３例の実績があり、腎・泌尿器科学分野の戸沢啓一准教授は「先進医療で費用負担が減れば手術を受けやすくなる」と期待する。

　ほかに藤田保健衛生大病院なども、腎がんの先進医療に加わる予定だ。厚生労働省によると現在、ダビンチによる手術で先進医療として承認されているのは胃がんと腎がんのみ。

（2014年9月19日　中日新聞朝刊1面より）