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中日新聞掲載の大学記事

2013.11.25

狙った化合物 ピタリ合成 名大チームが新触媒 薬作りムダなく

 複雑な構造を持つ炭素分子同士を独自に開発した触媒で結びつけ、これまでの技術では合成できなかった新しい構造の有機化合物を作り出すことに、名古屋大の研究グループが成功した。より効能の高い医薬品や農薬の開発につながることが期待される。研究論文が24日付で英科学誌ネイチャー・ケミストリー(電子版)に掲載される。

 チームは名大トランスフォーマティブ生命分子研究所の大井貴史教授、大松亨介特任講師、今川直道大学院生。

 炭素には、ほかの原子と結び付く「4本の手」がある。4本とも別の炭素原子団と結合する「不斉四級炭素」が連なった化合物は構造が複雑で、普通の合成では同時に少なくとも4種の生成物ができる。毒性を含むものもあるが、目的の化合物だけを作り分けることは至難の業とされていた。

 チームは、独自に開発した触媒で炭素同士が結合する際の向きをコントロールする技術を開発。この触媒を使って連続不斉四級炭素の合成実験をしたところ、副生成物を生まずに狙った構造のピロリジン化合物だけを5グラム作ることに成功した。

 ピロリジン化合物は糖尿病や血栓症、心筋梗塞の治療や輸血に使う抗血液凝固薬に用いる。複雑な構造の化合物をグラム単位で生成することで、効き目のある薬を開発する実験が進むことになる。

(2013年11月25日 中日新聞朝刊29面より)
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