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中日新聞掲載の大学記事

2011.08.25

A型インフル全種に効力 藤田保健衛生大 抗体、ヒトから発見

 すべてのA型インフルエンザウイルスと体内の細胞の結合を防ぐ抗体を、藤田保健衛生大の黒沢良和教授(免疫遺伝学)らのグループが、ヒトから発見した。米科学誌「ジャーナル・オブ・バイロロジー」の電子版に25日、発表した。

 毎年流行する季節性インフルエンザや鳥インフルエンザはいずれもA型で、ウイルスが細胞と結合して内部に侵入することで発症する。抗体はウイルスに先に結びつき、細胞との結合を妨害する。

 ウイルスは結合部の形を次々と変化させるうえA型でも種類が複数あり全ウイルスの結合を防ぐ抗体の存在はこれまでヒトでは知られていなかった。黒沢教授は「画期的な薬の開発につながる可能性がある」と話している。

 グループはヒトの血液を採取し、体内に存在する全抗体3000〜4000個をリストアップ。この中から候補を選んで実際にウイルスと反応させ、全ウイルスに効果のある抗体を見つけた。3人から抗体を採取したが、この抗体を持っていたのは1人だけだった。今後、エックス線解析で抗体の形を解析し、詳しい結合場所を特定していく。

 名古屋市立大の中島捷久名誉教授(ウイルス学)は「実際に体の中で効力を発揮しているかはまだはっきりしないが、もともとヒトの体内に存在する抗体なので、治療で投与してもリスクは低い。実用化に近い研究だろう」と話している。

(2011年8月25日 中日新聞夕刊1面より)
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