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動く楽しさ 伝えたい! 子どもの8割 運動不足のタイ ソフト強豪・中京大卒業生が指導

子どもたちにソフトボールを指導する佐藤はづきさん(右)=2月20日、タイ中部スパンブリ県で
2月下旬、タイ中部スパンブリ県のグラウンドで、佐藤さんが子どもたちに交じって白球を追いかけていた。「教えたことをできるようになってくれると、すごくやりがいを感じます」と息を弾ませる。指導を受けていた生徒も、「技術の勉強になって楽しい」と話した。
佐藤さんは全国屈指の強豪として知られる中京大のソフトボール部出身。昨年8月にタイへ渡った。同大はタイのソフトボール協会と協定を結び、強化を支援している。元々興味があった海外で、競技経験を生かせることに魅力を感じたという。主に中高生のほか、今秋の愛知・名古屋アジア大会にタイ代表として出場する学生や会社員らの指導を担っている。大会にも同行する予定だ。
タイのソフトボール競技人口は約3千人で、盛んとは言いがたい。佐藤さんは子どもたちにゴロの捕球の仕方やキャッチボールなど、基礎から教える。ノックが終わるまでの本数を決めるなど、ゲーム性も取り入れる。「子どもたちは面白くした方が積極的に練習してくれる」という。
佐藤さんが指導している学校には他にも部活があるものの、あまり盛んに活動している様子はない。タイで人気が高いサッカー部が週に3、4回練習しているくらいという。
タイオリンピック委員会のアドバイザーを務めるソフトボール協会のヨッサクライ会長は「タイでは学校が終わると塾に行く子が多い。スポーツをする子が少ないから試合も少なく、結果的に予算も限られる」と説明する。貧しい家庭では道具をそろえることが難しく、家の手伝いを優先する必要もある。
タイ身体活動知識開発センターによると、タイの5~17歳のうち、世界保健機関(WHO)が推奨する週420分を超えて体を動かしているのは20%にとどまる。日本では小学生の男子48%、女子26%で、多くの学校で部活動が始まる中学生になると男子75%、女子55%に増える(調査対象は小5と中2)。
タイのスポーツ関係者とも連携している日本スポーツ協会スポーツ科学研究室の青野博室長は「スポーツは社会性や自信を育むことにつながる」と運動習慣の重要性を説明。運動不足の解消に向けて「大人たちがスポーツの意義を理解し、子どもたちに体を動かすことが楽しいという経験を届けることが大切」と指摘する。
佐藤さんの任期は来年8月まで。「自分がいなくなった後もみんなに競技を続けてもらうよう、子どもたちの主体性を育てていきたい」と話している。
(2026年3月30日 中日新聞朝刊5面より)