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お知らせ  2022.05.16

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絶滅危惧ベニガオザル 血縁ない雄 繁殖で協調 ヒト社会 進化解明に期待 中部大など調査

 アジアに生息する絶滅危惧種のサル「ベニガオザル」の雄が、血縁関係がないほかの雄と協力してライバルの雄を排除し、雌を囲い込んで繁殖の成功度を高めていると、中部大(愛知県春日井市)などの研究グループが発表した。ヒト以外の霊長類で、血のつながりがない個体同士が協力する行為は珍しいという。 (出口有紀)

 霊長類の雄は通常、交尾や繁殖を巡ってお互いに激しく争い、協調することは難しいとされる。中部大の豊田有(ある)・日本学術振興会特別研究員(31)=霊長類学=は、旧京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の院生だった2015年から約2年、タイの保護区で約400頭のベニガオザルを観察。サルの識別などのために50万枚以上の写真を撮った。

 それらを分析した結果、5つの群れが存在し、このうち最も強い雄1頭が複数の雌との交尾を独占する群れが2つ。2~3頭が協力して他の雄が近づかないようにしつつ、雌と交尾する群れが3つあった。

 雌を独占する群れでは、雄1頭が群れの約半数の雌と交尾。協力する群れでは、2~3頭の雄が群れの約7~8割の雌と交尾していた。子のDNAを調べると、協力した雄それぞれが子を残せていた。

 豊田さんは「雄が1対1で戦って負ければ交尾できず子も残せない。協力すれば多くの雌と交尾でき、自分の子を残せる確率が上がる」と解説。霊長類の協力行動は一般的に血縁関係がある個体同士でしか起きないが、今回は血縁関係がない雄同士でも協力できることが分かった。

 「ヒトは血縁がなくても協力できるから社会が成り立っている。血縁がなくても共通の課題解決に向けて協力するメカニズムを明らかにすることが、ヒトの協力行動の進化の解明に結びつく」と豊田さんは期待。「今後、複数いる雄の中からどうやって協力相手を選ぶのか研究したい」と話している。

 論文は国際専門誌「フロンティアーズ・イン・エコロジー・アンド・エボリューション」に掲載された。

■ベニガオザル
 インドや中国、タイ、マレーシアなどアジア地域に生息する絶滅危惧種のオナガザル科マカク属のサルで、赤い顔が特徴。果実や種子などを食べる。切り立った崖の多い岩山を好んで暮らすが、近年、森林伐採や土地の開拓で生息できる地域が少なくなっている。

(2022年5月16日 中日新聞夕刊1面より)

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