出生時の性別と自認する性別が異なる「トランスジェンダー」に対する理解を深めてもらうため、当事者や高田高校（津市）放送部員らでつくる団体「ＮＦＴ」が、小学校低学年向けの絵本を作った。実話を基にイラストを交えながら分かりやすく紹介。幼い頃から性の多様性について伝え、正しい知識を身に付けてもらいたいと願う。（牧野良実）

　＜お母さん、私は男の子なの。もうスカートも限界…＞。絵本「高校生がトランスジェンダーから学んだこと」で描かれた一場面だ。

　絵本は、女性の体で生まれて男性の心を持つえみちゃんと、男性として生まれて女性の心を持つ中学校のレイ先生の二つの実話を紹介した。幼少期から抱えてきた悩みや、周りに打ち明けるまでの葛藤を描いている。えみちゃんは、団体メンバーの浦狩知子さん（６０）＝いなべ市＝の子どもがモデルになっている。

　絵本は２年ほど前、各地で当事者の相談などに応じる浦狩さんから「子どもに分かりやすく伝えるのが難しい」との悩みを聞き、高田高生たちが提案した。３年生の生徒（１８）が中心となって当事者らを取材し、文章や絵を手がけた。「当事者を傷つけないように」と、表現などを団体のメンバーで意見交換して仕上げたという。

　浦狩さんは既に県内の小学校の講演で活用。教職員からは「教材としてこういう絵本があると良い」などと好評だったという。浦狩さんは「絵本を通じて子どもたちが自分らしく生きるための知識を備えてほしい」と期待する。

　高校生たちは、県内の放課後児童クラブでの読み聞かせなどを計画する。幼保育園や小中学校、県立図書館などに置いてもらうことが目標だ。３年生の生徒は「周りの人の言葉で傷ついたり、悲しんだりする人がいるかもしれない。少しでもＬＧＢＴＱ（性的少数者）のことを知ってもらえたら」と話した。

　絵本はＢ５判。インターネット通販「アマゾン」などで２０１３円（税込み）で販売している。（問）高田高放送部＝０５９（２３２）２００４

（2023年11月7日　中日新聞朝刊三重版より）