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2017.09.27
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認知機能障害 改善に光 統合失調症薬 副作用を解明 名城大グループ
統合失調症の治療の際、薬を長期間投与すると、問題解決能力の低下など認知機能障害の悪化につながるメカニズムを、名城大薬学部の衣斐大祐助教らのグループが突き止めた。患者の日常生活に大きく関わる認知機能障害の改善は、統合失調症治療の難題の1つで、新薬開発への期待が高まる。近く、研究成果を正式発表する。(小椋由紀子)
統合失調症の症状としては、ありもしないものを見たり、妄想が強まったりする陽性と、感情が乏しく、無気力になるなどの陰性がよく知られている。問題解決能力や集中力が低下する認知機能障害は目に見えにくく軽視されがちだが、仕事や人間関係に影響し、社会的に孤立する原因ともなる。現在、主流の治療薬は陽性、陰性に効果があるが、長期間、投与しても認知機能障害の症状は改善されず、かえって悪化する例が報告されていた。
グループは、認知機能に関係する「HDAC2」という遺伝子に着目。治療薬を1カ月間、マウスに投与したところ、普通のマウスは認知機能が低下したが、人為的にこの遺伝子を無くすと、正常な状態を保つことができた。
さらに実験を繰り返し、現在の治療薬は「セロトニン」という脳内物質の働きを阻害することで効果を上げているが、同時に脳内の遺伝子のバランスを崩し、HDAC2を活性化させていることが判明。脳内の情報伝達に必要なタンパク質が作られず、認知機能に悪影響を及ぼすとみられる。
衣斐助教によると、既にHDAC2の活性化を防ぐ薬を米国の大学で臨床試験中だといい「統合失調症に限らず、精神疾患の治療薬の隠れた副作用を解明できれば」と話した。
(2017年9月27日 中日新聞朝刊29面より)
■関連大学はこちら
・ 名城大学
統合失調症の症状としては、ありもしないものを見たり、妄想が強まったりする陽性と、感情が乏しく、無気力になるなどの陰性がよく知られている。問題解決能力や集中力が低下する認知機能障害は目に見えにくく軽視されがちだが、仕事や人間関係に影響し、社会的に孤立する原因ともなる。現在、主流の治療薬は陽性、陰性に効果があるが、長期間、投与しても認知機能障害の症状は改善されず、かえって悪化する例が報告されていた。
グループは、認知機能に関係する「HDAC2」という遺伝子に着目。治療薬を1カ月間、マウスに投与したところ、普通のマウスは認知機能が低下したが、人為的にこの遺伝子を無くすと、正常な状態を保つことができた。
さらに実験を繰り返し、現在の治療薬は「セロトニン」という脳内物質の働きを阻害することで効果を上げているが、同時に脳内の遺伝子のバランスを崩し、HDAC2を活性化させていることが判明。脳内の情報伝達に必要なタンパク質が作られず、認知機能に悪影響を及ぼすとみられる。
衣斐助教によると、既にHDAC2の活性化を防ぐ薬を米国の大学で臨床試験中だといい「統合失調症に限らず、精神疾患の治療薬の隠れた副作用を解明できれば」と話した。
(2017年9月27日 中日新聞朝刊29面より)
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