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中日新聞掲載の大学記事

2013.05.01

ベンゼンからフェノール 室温で合成 名大教授らのグループ 酵素を活用し新方法

 炭素分子の「ベンゼン」から医薬品や顔料などの原料となる有機化合物「フェノール」を、室温で合成する新たな方法を名古屋大物質科学国際研究センターの渡辺芳人教授や理学研究科の荘司長三准教授らのグループが開発した。独化学会誌「アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション」の電子版に29日、発表した。

 現在の方法では、高温、高圧の危険な状態で合成する必要があり、効率も低い。荘司准教授は「工業への応用が期待できる方法。コストも大幅に削減できる可能性がある」と説明する。

 グループは、特定の化合物が入ってきたときだけに働く巨大菌の酵素に着目。ベンゼンだけでは酵素が働かなくても、化合物の偽物を一緒に加えれば誤作動し、フェノールを作ると推定した。

 特定の化合物に形が似た偽物を合成し、偽物をベンゼンと一緒に加えると、酵素は偽物を本物と「勘違い」。実際にベンゼンをフェノールに作り替える働きをした。

 今回の方法は副産物もできず、合成効率を高めることができる。だが、長期間利用する必要がある酵素が1時間ほどで劣化してしまう弱点もある。荘司准教授は「企業と連携して研究し、課題を克服していきたい」と話している。

(中村禎一郎)

(2013年5月1日 中日新聞朝刊県内総合版より)
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