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中日新聞掲載の大学記事

2012.09.21

宇宙でも健康体で 無重力で機能保つ実験 岐阜医療科学大など ISS向けに装置小型化

 宇宙旅行の時代に−。岐阜医療科学大(関市市平賀)と愛知医科大(愛知県長久手市)の研究チームが、無重力状態で低下する体の機能を保つ宇宙医学の実験に挑戦している。過去の同じ実験より小型化した装置を使い、成功すれば国際宇宙ステーション(ISS)の米航空宇宙局(NASA)のスペースへの設置を提案する構想だ。(成田嵩憲)

 研究チームは、岐阜医療科学大保健科学部放射線技術学科の田中邦彦教授、愛知医科大医学部医学科生理学講座の岩瀬敏教授、西村直記講師の3人。

 田中教授によると、無重力状態では頭に血液がたまりやすいほか、筋肉が細くなったり、骨密度が小さくなったりする。内耳の機能も低下して体のバランスが保てなくなる。宇宙旅行や滞在のためには、こうした体の機能低下を抑えるための実験が必要という。

 被験者は2人。血液の流れを宇宙と同じ環境にするため、頭を6度低くして寝たまま5日間を過ごす。1人が横たわったまま回転する人工重力付加装置に乗り、1日30分間、遠心力で重力をかけながら自転車のペダルをこぐ運動。もう1人は運動をせずに過ごし、2人の体の機能を比較する。

 岩瀬教授らは2006年までに、直径4メートルの人工重力付加装置を使い大掛かりな実験を進めた。遠心力で血流を体全体に流すため、体の不具合を解消する効果が出たという。今回はISSに設置可能という直径2.8メートルの小型装置を使った。

 実験は9月に入って開始し、大学生2人が被験者となった。5日間の実験を終えベッドに横たわったままの黒田晃生さん(24)=岐阜大4年=は「実験中は頭を動かすと痛かった。起き上がったらふらついた」と漏らした。人工重力装置を使った小園竜也さん(21)=岐阜医療科学大3年=は「普段と大して変わらない」と話した。

 研究チームは9月中に実験のデータをまとめる。

(2012年9月21日 中日新聞朝刊岐阜総合版より)
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