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お知らせ 2020.08.07

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豊川高等学校

海軍工廠の悲劇 思い重ね 豊川高演劇部 創作劇 稽古に熱

■きょう無観客で上演

 豊川市の豊川高校演劇部が、太平洋戦争末期の空襲で2500人以上の犠牲者を出した豊川海軍工廠(こうしょう)で働く女学生を題材にした創作劇「すけっちぶっく」に取り組んでいる。終戦から75年を迎え、空襲体験者から直接話を聞く機会が減る中、部員たちは「同世代の悲劇を風化させたくない」と稽古を重ねている。(川合道子)

 劇は、工廠で学徒として働く3人の女学生の物語。主人公は絵を描くことが得意な15歳の女学生(あかね)。一緒に寄宿舎生活を送る友人2人と「絵描きになりたい」という夢を語り合った直後、1945年8月7日の空襲に遭う。1人生き残った友人が75年の時を経て、当時を回想する形で物語は進む。

 台本は、空襲体験者が高齢化する中「演じることで戦争の悲惨さを感じてほしい」と副顧問の黒田啓一教諭(60)が今年1月に制作。部員たちは当時を知る親戚に話を聞いたり、工廠をテーマにした勉強会に参加したりして理解を深めてきた。

 あかねが隠していたスケッチブックを破る将校役の1年男子生徒(16)は、「悪役と思ったが、戦地で多くの人が亡くなる状況では、そうせざるを得なかった部分もあったのでは」。あかねの家に工廠で働くよう通知が届く場面では「お国のために『うれしい』とは言いつつ、複雑だったと思う」と演出担当の2年女子生徒(16)は話す。

 劇は空襲があった7日に校内のホールで無観客上演される。3年生にとっては新型コロナウイルス感染拡大に伴って中止された大会に替わる最後の舞台になるという。

 主役を演じる部長の3年女子生徒(17)は「いつもできていることができなくなった状況は戦時中と似ていると思う。今は無理でも、あきらめずに人生を歩もうという思いも込めて演じたい」。劇の動画は、後日ウェブ上で開かれる同高のオープンスクールで公開する予定で、顧問の安田真奈美教諭(23)は「コロナ収束後は中学校などへ出張公演する機会を設け、演劇を通じて工廠のことを伝えていきたい」と話している。

(2020年8月7日 中日新聞朝刊東三河版より)

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