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高校野球 2019.04.04

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春の東邦5度目V 選抜最多 最初と最後 平成の快挙

選抜高校野球大会で、30年ぶり5度目の優勝を決め喜ぶ石川主将(中央)ら東邦ナイン =3日、甲子園球場で(内山田正夫撮影)

選抜高校野球大会で、30年ぶり5度目の優勝を決め喜ぶ石川主将(中央)ら東邦ナイン =3日、甲子園球場で(内山田正夫撮影)

 第91回選抜高校野球大会は3日、甲子園球場で決勝が行われ、東邦(愛知)が習志野(千葉)を6-0で破り、1989年以来となる30年ぶり、5度目の優勝を果たした。平成元年の最初の大会で優勝した東邦が、平成最後の大会でも王者となった。

 5度の選抜制覇は、中京大中京(愛知)と並んでいた優勝回数で単独トップに立った。春の通算勝利数でも中京大中京の55勝を上回る56勝で単独一位となり、「春の東邦」にふさわしい記録ずくめの優勝となった。

 東邦は1回、エースで主将の石川昂弥(たかや)選手(3年)の中越え2点本塁打などで3点を先制。石川選手は5回にも2点本塁打を放ち、習志野を突き放した。投げても二塁を踏ませず、97球で3安打完封。今大会は全5試合に先発し、3度目の完投となった。

 愛知県勢の選抜優勝は2005年の愛工大名電以来14年ぶり11度目で、大阪府勢とともに首位に並んだ。

■30年越しの夢 逸材とつかむ

 平成最後のセンバツで、元年の優勝に縁ある師弟が新たな歴史を紡いだ。東邦を率いたのは、当時コーチだった森田泰弘監督(60)。投打に活躍しチームをけん引したのは、当時の野球部員の息子である石川昂弥選手(3年)だった。

 最後の打者を打ち取った瞬間、石川選手は右腕を突き上げた。大歓声の中、マウンドで喜び合う選手たち。「やっと優勝できた」。森田監督は、グラウンドで喜びをかみ締めた。

 森田監督は30年前の優勝時、コーチとしてバックネット裏で感涙した。15年後の2004年には恩師の阪口慶三さん(74)=現大垣日大監督=から監督を引き継ぎ「もう一度優勝を」と心に決めた。

 昨年まで甲子園出場は春夏通算計6回。しかし、いずれも頂点には届かなかった。09年からは5年連続で出場を逃し「二度と行けないのかな」と感じたことも。初志とは裏腹に、自ら「優勝」の二文字を公言したことはなかった。

 本気で全国制覇の夢を託したのが、原点とも言える元年優勝時の部員尋貴(ひろたか)さん(47)の長男石川選手だった。中学2年生の頃に出会い「一流選手になる素質がある」とほれ込んだ。入学後、妻順子さん(41)が営む焼き肉店が入る建物の一室に石川選手ら3人を住まわせ、野球に専念する環境を整えた。

 期待通り、石川選手は新チームで主将兼エースを担うまでに成長。センバツ開幕を控えた2月、森田監督は初めて宣言した。「今年は絶対に優勝します」

 満を持して迎えたこの日。石川選手は2本塁打を放ち、投げては3安打完封と優勝の原動力に。試合後、「監督の下で学びたいと東邦に来た」と胸を張った。4日に還暦60歳の誕生日を迎える森田監督は、本年度限りで退任の決意を固めている。「最後の年に石川に巡り合えた」。愛弟子に感謝の言葉をそっと送った。

 (松野穂波)

(2019年4月4日 中日新聞朝刊1面より)

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